概要
同一事業所内で複数の製造所等を有し、かつ第4類危険物を大量に貯蔵・取り扱う製造所等の所有者等は、危険物保安統括管理者を定め、事業所における危険物の保安に関する業務を統括管理させなければなりません。
製造所等の所有者等は、危険物保安統括管理者を選任したとき、または解任したときは、遅滞なく市町村長等(所轄消防長・消防署長等)に届け出なければなりません。
危険物保安統括管理者になるための資格要件は法律上は規定されていません。ただし、事業所において事業の実施を統括管理する者であることが求められますので、一般には工場長などの管理職が選任されます。
危険物保安統括管理者の選任を必要とする製造所等
次の製造所等は、危険物保安統括管理者を選任しなければなりません。
| 対象となる製造所等 | 貯蔵・取扱う第4類危険物の数量要件 |
|---|---|
| 製造所 | 指定数量の倍数が3,000以上 |
| 一般取扱所 | 指定数量の倍数が3,000以上 |
| 移送取扱所 | 指定数量の倍数が1以上(= 指定数量以上) |
※「指定数量の倍数」は、実数量 ÷ 指定数量で算定します。複数品目や複数設備がある場合は
品目ごとに(数量 ÷ 指定数量)を合算して判断します(例:第4類の異なる品目を併せて取り扱う場合の合算)。
※ 本節は「同一事業所で複数の製造所等を有する場合」を想定しています。実務では所轄消防への事前確認が有効です。
自衛消防組織
危険物保安統括管理者の選任が必要となる規模の事業所の所有者等は、当該事業所に自衛消防組織を置かなければなりません。
自衛消防組織は、事業所の規模・危険物の種類や数量に応じて、法令で定める基準以上の人員および必要な消防資機材(例:化学消防自動車・泡消火設備・無線・防火衣 等)を備えて編成します。
自衛消防組織の基本構成(例)
- 隊長(指揮):事案全体の指揮・対外連絡の統括を行います。
- 通報・連絡班:119番通報、所轄消防・関係部署への連絡、館内放送を担当します。
- 初期消火班:初期消火・延焼防止、消火設備の操作を担当します。
- 避難誘導班:避難経路の確保、来訪者・要配慮者の誘導・点呼を担当します。
- 安全・後方支援班:危険区域の立入管理、救護・資機材補給を担当します。
日常の体制と訓練
- 編成表・連絡網の整備:当直・夜間・休日の体制も含め、常に連絡が取れる状態にします。
- 計画・記録:自衛消防計画の作成・見直し、教育・訓練の実施記録を保存します。
- 定期訓練:通報・初期消火・避難誘導を含む総合訓練を定期的に実施します(訓練は実情に即して、昼夜・平休日を織り交ぜると効果的です)。
- 設備点検:消火器・屋内消火栓・泡設備・無線などの点検と補充を行います。
※ 自衛消防組織は事業所単位で編成します。具体的な人員数や装備基準は、危険物の規模・設備構成により異なります。試験では、「統括管理者を要する事業所 ⇒ 自衛消防組織の設置義務」のつながりと、自衛消防の主な任務(通報・初期消火・避難誘導)を確実に押さえます。
クイズ
次は第1章14節:危険物施設保安員に進みます。