構造・設備

固定給油設備=自動車等に直接給油するための固定設備(ポンプ機器+ホース機器)。形式は 固定式(地上設置)と懸垂式(天井吊り)の2種。

固定注油設備=灯油・軽油を容器に詰替える/車両の固定タンク(≦4,000L)へ注入する固定設備。

給油空地・注油空地の要件

ホース機器の周囲(懸垂式は下方)に、出入・給油のための空地を設ける

区分 規模 主な要件
給油空地 間口 10m以上 × 奥行 6m以上
  • 道路に面し、車両が安全・円滑に出入り可
  • 車両が空地からはみ出さずに通行・給油可
注油空地 (規模は用途に応じ設定)
  • 灯油・軽油の容器詰替え/固定タンク注入用
  • ホース機器の周囲(懸垂式は下方)に設ける

舗装・排水・油分離

  • 舗装:漏れた危険物が浸透・劣化・変形を生じない材料/車両荷重で損傷しない耐火性を有する。
  • 排水:空地に危険物・可燃性蒸気が滞留しない勾配を付け、排水溝+油水分離装置等で場外流出を防止。

専用タンク・廃油タンク等

  • 固定給油/注油設備に接続する専用タンクや、10,000L以下の廃油タンク地盤面下に埋設して設置可。
  • 地盤面下に埋設される接続専用タンク容量制限なし(法令要件に従う)。
  • 防火地域・準防火地域以外では、地上に容量600L以下の簡易タンク同一品質ごとに1個×最大3個まで設置可。

ホース・静電気対策

  • 給油/注油ホースは先端に弁を設け、全長5m以下
  • ホース先端に蓄積する静電気除去装置を設ける(接地等)。

建築物(事務所含む)の構造

  • 壁・柱・床・はり・屋根:耐火構造または不燃材料で造る。
  • 開口部:窓・出入口には防火設備を設ける。

道路境界等からの間隔(離隔)

設備形式 基準 補足
懸垂式固定給油設備 4m以上 道路境界線等からの最小離隔
固定給油設備
(上記以外)
4〜6m以上 ホースの長さに応じて設定

周囲の塀・壁(延焼防止)

自動車の出入口側を除き、高さ2m以上耐火構造または不燃材料の塀/壁を設ける。 開口部は設けないこと。

ポンプ室等を設ける場合

  • 床:危険物が浸透しない構造とし、適切な勾配を付ける。
  • 貯留設備:漏えい液の貯留設備を設け、滞留・流出を防止。

頻出ポイント/ひっかけ注意

  • 「塗装」ではなく「舗装」:浸透防止は舗装要件。語感でミスを誘う定番。
  • 給油空地の規模:10m×6m 以上。数字の取り違えに注意(6×10に反転も)。
  • ホース長:給油/注油とも5m以下+先端弁。 “約5m” ではなく上限。
  • 離隔:懸垂式=4m以上、その他はホース長に応じ4〜6m以上。形式で数字が変わる。
  • 簡易タンク:地上600L以下・同一品質ごと1個×最大3個防火/準防火以外のみ。

給油取扱所に設置できる建築物の用途

給油取扱所に設けられる建築物・工作物は、給油その他の業務のためのものに限られ、 かつ「避難又は防火上支障がない」と総務省令で定められた用途に限る。 また、係員以外が出入りする部分の床面積の合計は 300㎡ 以下とする。

設置できる建築物等の用途

設置できる建築物等の用途
区分 用途・概要
① 作業場(給油・注油) 給油、灯油・軽油の詰替え、車両固定タンク(≦4,000L)への注入のための作業場。
② 事務所 給油取扱所の業務を行うための事務所。
③ 点検・整備作業場 自動車等の点検・整備を行う作業場(吹付塗装は不可:下表参照)。
④ 洗浄作業場 自動車等の洗浄を行う作業場。
⑤ 住居・関連事務所 給油取扱所の所有者等が居住する住居、または当該者に係る他の給油取扱所の業務を行う事務所。
⑥ その他(防火対象物の一部) 政令別表第1のうち支障がない用途(例:飲食店、スーパー、図書館、工場、平面駐車場、倉庫、事務所、コインランドリー、簡易郵便局、美容室 等)。
また、屋外の物品販売場等(建築物周囲の空地で、火災予防上の支障がない場合に限る)— 実車展示・販売、宅配ボックス配置 等。

設置できない建築物・設備の例

※ 以下は代表例。条例等で追加の制限がある場合あり。

設置できない建築物・設備
区分 内容
① ガソリン詰替え作業場 ガソリンの容器詰替えを行う作業場(ガソリンは注油対象外)。
② 吹付塗装設備 自動車の吹付塗装を行う設備。
③ 一般来場者向けの施設 病院・診療所、保育所、養護老人ホーム、幼稚園、特別支援学校、宿泊施設立体駐車場、 ラック式ドラム缶置場、大規模広告物、風俗営業(キャバレー、パチンコ店、ゲームセンター 等)。

頻出ポイント/ひっかけ注意

  • 300㎡上限:係員以外が出入りする部分の合計。事務所+売店+待合等の合算で超えないか要注意。
  • ガソリンは「注油(容器詰替え)」不可。灯油・軽油のみ可(給油=車両直接給油は別)。
  • 整備OK/吹付塗装NGの線引きが頻出。
  • 平面駐車場は可/立体駐車場は不可(語感ひっかけ)。
  • 住居は「所有者等」限定。一般賃貸住居は×とする出題に注意。

給油取扱所の付随設備

給油取扱所の業務を行ううえで設けることができる付随設備は、次のとおり。

給油取扱所で設置できる付随設備
設備 概要・注意
洗浄設備
  • 蒸気洗浄機洗車機など。
  • 排水は油水分離等で場外流出を防止。
点検・整備設備
  • 自動車等の点検・整備を行う設備。
  • 吹付塗装設備は不可(設置できない設備に該当)。
混合燃料油調合器
  • 2ストローク等の混合用。可燃物の取扱い手順・漏えい対策に留意。
尿素水溶液供給機
  • いわゆる AdBlue® 供給機。腐食対策・こぼれ対策を講じる。
急速充電設備
  • EV 用。電気設備の保安・表示・動線分離に留意。

頻出ポイント/ひっかけ注意

  • 整備OK/吹付塗装NGの線引き(本節の王道ひっかけ)。
  • 洗浄設備は可だが、排水は油水分離+場外流出防止が前提。
  • 尿素水(AdBlue)は可。危険物扱いではない点を混同しない。
  • 急速充電設備は可。給油設備と動線・表示を分ける前提が定石。
  • ガソリンの容器詰替え設備は不可(注油可は灯油・軽油のみ)。

取扱いの基準

  • 固定給油設備を使用して直接給油する。
  • 給油時は原動機(エンジン)を停止する。
  • 給油・注油は所定の空地(給油空地/注油空地)内で完結させる(はみ出し禁止)。

空地からの「はみ出し」禁止(適用範囲)

対象行為 空地要件
自動車等への給油(固定給油設備) 車両の一部も含め給油空地内で実施。空地からはみ出し不可
ガソリンを容器に詰替え/軽油を車両固定タンクへ注入(固定給油設備) 給油空地内で実施。容器・車両が空地からはみ出し不可
灯油・軽油を容器に詰替え/車両固定タンクへ注入(固定注油設備) 注油空地内で実施。容器・車両が空地からはみ出し不可

移動タンク貯蔵所 → 専用タンク等への注入

  • 移動タンク貯蔵所は、専用タンク等の注入口付近に停車させる。

給油取扱所に専用タンク等(専用タンク/簡易タンク)がある場合に、当該タンクへ危険物を注入するときは、次を守る。

原則/例外 内容
原則 当該専用タンク等に接続する固定給油設備/固定注油設備の使用を中止する。
例外(専用タンク注入時の措置を講じた場合)
  • 固定給油設備のノズル:燃料タンクが満量で自動停止する構造。
  • 固定注油設備のノズル:容器が満量で自動停止する構造。
  • 専用タンク/移動タンク貯蔵所:誤注入防止構造(種類取り違えを有効に防止)。
    ※ 取扱う危険物が一種類で同一など、保安上支障がない場合は除外可。
立入規制 (2)注入作業時は自動車等を注入口に近づけない

駐停車・作業の制限

  • 固定給油/固定注油設備の注入口・通気管周囲(法定の範囲)では、他車の駐車を禁止。点検・整備・洗浄も行わない。
  • 屋内給油取扱所の通風・避難用空地では、駐車・停車を禁止し、避難に支障となる物件は置かない。

その他の取り扱い

  • 洗浄時は引火性のある液体洗剤を使用しない
  • 物品販売等は原則 建築物の1階のみで実施。

給油の業務が行われていないときの措置

  • 危険物取扱箇所(固定給油/固定注油設備、簡易タンク、通気管・専用タンク注入口 等)の周囲では、 係員以外を近寄らせない措置を講ずる。
  • 固定給油設備・固定注油設備・簡易タンク・ポンプ・制御卓などは、みだりに操作できない措置を講ずる。
  • 係員以外の利用を禁止する箇所は、近寄り防止措置を講ずる。

顧客による給油・詰替えの禁止(非セルフの場合)

顧客に自ら給油させたり、ガソリン・灯油・軽油の容器詰替えや注入をさせてはならない(セルフ方式は別規定)。

頻出ポイント/ひっかけ注意

  • 空地からのはみ出し禁止は、給油・注油のどちらにも適用(設備によって「給油空地/注油空地」が異なる)。
  • 原則:設備停止/例外:自動停止+誤注入防止の2段構えを整理。
  • 通気管・注入口の周囲=駐車禁止&作業禁止(場所の特定がひっかけ)。
  • 引火を有する洗剤」→正しくは引火性のある液体洗剤。表現のひっかけに注意。
  • 非セルフでは顧客給油NG。セルフ方式は別節で扱う(混同させる問題に注意)。

ガソリンの容器詰替え販売時における本人確認等

ガソリンを容器に詰替えて販売する場合は、次の3つを必ず実施する。

  • ① 顧客の本人確認
  • 使用目的の確認
  • 販売記録の作成・保存

① 顧客の本人確認

本人確認の方法
項目 内容
原則
  • 運転免許証、マイナンバーカード等の公的機関が発行する写真付き身分証で確認する。
例外(省略可)
  • 既に身分証等で確認済みの顧客。
  • 継続取引があり、当該事業所で氏名・住所等を把握している場合。

② 使用目的の確認

使用目的の確認
確認事項 具体例
使用目的 農業機械用燃料」「発電機用燃料」など、具体的に聞き取る

③ 販売記録の作成・保存

販売記録の作成・保存
記録項目 保存の目安
  • 販売日顧客氏名・住所本人確認方法使用目的販売数量
原則1年間保存。

実務上の注意(詰替え作業の方法)

  • 自動車の燃料タンク以外の容器(携行缶等)にガソリン又は軽油を詰替える作業は、必ず従業員が行う
  • 固定給油設備の給油ノズル満量停止装置が確実に機能すること。
  • 詰替え作業は危険物取扱者である従業員が実施し、予防規定の文書に明記しておく。
  • 指定数量以上のガソリンを容器へ詰替える場合は、満量自動停止+誤注入防止等の措置を講じた場合に限り可。
  • ガソリンの詰替えは、容器を接地して実施する。

運搬容器(プラスチック製容器)の要件

ガソリン運搬用プラスチック容器の要件
表示・規格 容量・使用期限
UN表示・容器記号3H1が容器に明記されていること。 最大容積10L以内製造日から5年以内のもの。

頻出ポイント/ひっかけ注意

  • 3本柱(本人確認・目的・記録)の取りこぼしがないか。
  • 本人確認=写真付き公的身分証。ポイントカード等は不可。
  • 目的は具体的に(「機械用」「発電機用」など)。「私用」等の抽象回答は×。
  • 販売記録は1年保存。日付・氏名・住所・確認方法・目的・数量を網羅。
  • 携行缶詰替えは従業員が実施。セルフでの容器詰替えはNG。
  • UN 3H1/10L/5年の数字ひっかけに注意。
  • 指定数量以上OKの例外は「満量自動停止+誤注入防止+取扱者実施+予防規定明記」が前提。

屋内給油取扱所

給油取扱所は 構造により次のように区分される。

  • 屋外型 … 建築物の内部に含まれない配置(屋外での給油)。
  • 屋内型 … 建築物内に給油設備があるタイプで、 一方開放型二方開放型に分かれ、さらに上階に他用途がある/ないで細分される。

構造による区分(全体像)

区分 概要
屋外型 建築物の内部に含まれない配置で給油を行う一般的な形態。
屋内型 建築物内に給油設備がある形態。開放方向の数(一方/二方)と、上階に他用途があるかで分類。

屋内型の細分類

タイプ 上階に他用途なし 上階に他用途あり
一方開放型
  • 外部に一方向の開口を有する。
  • 建物上部は同用途のみ(上階に他用途なし)。
  • 外部に一方向の開口を有する。
  • 上階に他用途(店舗・駐車場等)が存在。
二方開放型
  • 外部に二方向の開口を有する。
  • 上階に他用途なし。
  • 外部に二方向の開口を有する。
  • 上階に他用途あり

頻出ポイント/ひっかけ注意

  • 屋内型は「一方 or 二方」+「上階他用途の有無」計4タイプに分かれる(数え落とし注意)。
  • 開放方向=外部に開いた面の数。出入口の数ではなく「外部への開口面」の数で判定する、という言い回しに注意。
  • 屋外/屋内の取り違え:建築物の内か外かで判断(屋根の有無だけで決めない)。
  • 「上階他用途あり」の有無を問う設問が定番。文中の「上階に(他用途が)ある/ない」を見落とさない。
  • 屋内型の詳細な設備・避難条件は別途基準。この節はまず分類の名前と組み合わせを確実に覚えるのが狙い。

クイズ

給油取扱所に設けてはいけない建築物その他の工作物は次のうちどれか。

次は第1章31節:セルフ型の給油取扱所の基準に進みます。

セルフ型の給油取扱所の基準