運搬の基準

運搬基準の適用

危険物の運搬とは、トラックなどの車両で危険物を移動させることをいいます。 この運搬に関する技術上の基準(運搬の基準)は、 指定数量未満の危険物にも適用されます。

なお、危険物の運搬には届出や許可の義務はありません

まずはここだけ押さえよう!

  • 危険物の運搬=トラックなどの車両で危険物を移動させること
  • 運搬の基準は、指定数量未満の危険物にも適用される。
  • 運搬そのものに届出・許可は不要

運搬容器:材質・構造・最大容積

危険物は、運搬の際には必ず容器に収納して運搬しなければなりません。 危険物の性状・危険性・数量に応じた容器の 材質・構造・最大容積は、政令で定められています。

材質

運搬容器の材質として、次のようなものが認められています。

  • 鋼板、アルミニウム板、ぶりき板、ガラス、金属板
  • 紙、プラスチック、ファイバ板、ゴム板
  • 合成繊維、麻、木、陶磁器

構造

容器は堅固容易に破損しないこと、 また口部から内容物が漏れない構造であることが必要です。

容器の構造および最大容積は、 容器の区分ごとに細かく規定されています。

性能試験

容器は、告示で定められた性能試験に適合している必要があります。

機械荷役構造を有しない容器
落下試験/気密試験/内圧試験/積み重ね試験
機械荷役構造を有する容器
落下試験/気密試験/内圧試験/積み重ね試験/ 底部持ち上げ試験/頂部つり上げ試験/ 裂け伝播試験/引き落とし試験/引き起こし試験

機械荷役構造…フォークリフトやクレーンでつり上げ・持ち上げができるようにした構造のこと。

危険等級と容器の適合

危険物は危険性の程度に応じて危険等級 I・II・IIIに区分されます。 それぞれの危険等級ごとに、危則別表第3の2に基づいて 使用できる容器(適合容器)が定められています。

例:灯油・軽油(危険等級 III) → ガラス容器、プラスチック容器、金属製容器 など

特例(内装容器+外装容器)

第4類のうち、次のものは内装容器+外装容器の組合せを条件に、 特例として運搬容器と認められます。

  • 第4類の第3石油類・第4石油類・動植物油類プラスチックフィルム袋内装容器とし、 木箱・プラスチック箱・ファイバ板箱などの外装容器に収納したもの
  • 第4類のアルコール類最大容積1L以下のプラスチックフィルム袋内装容器とし、 ファイバ板箱(不活性の緩衝材入りに限る)外装容器としたもの

※ 「内装容器」は中身を入れる袋やびん、「外装容器」はそれをまとめて入れる箱のイメージ。

出る出るポイント!

  • 運搬基準指定数量未満の危険物にも適用される。
  • 容器の性能試験は 「機械荷役構造の有無」で内容が変わる。 有する容器は試験が増えることを押さえる。
  • 第4類の第3・第4石油類・動植物油類・アルコール類には、 内装容器+外装容器の特例がある。

ひっかけ注意!

  • 「運搬基準は指定数量以上だけに適用」とする 誤った記述に注意(正しくは未満にも適用)。
  • 危険物の運搬そのものに届出・許可は不要。 「運搬には許可が必要」と書かれていたら×。
  • アルコール類の特例は 『最大容積1L以下』のプラスチックフィルム袋が条件。 「2L」「5L」など数字だけ変えた選択肢は要チェック。

危険等級

危険等級
類別 等級 品名等
第1類 I 第1種酸化性固体
II 第2種酸化性固体
III 第3種酸化性固体
第2類 II 第1種可燃性固体(例:硫化りん、赤りん硫黄 など)
III 第2種可燃性固体(II 以外のもの)
第3類 I 第1種自然発火性・禁水性物質 (例:黄りん、アルキルアルミニウム、アルキルリチウム、 カリウムナトリウム など)
II 第2種・第3種自然発火性・禁水性物質(I 以外のもの)
第4類 I 特殊引火物
II 第1石油類アルコール類
III 第2〜4石油類・動植物油類
第5類 I 第1種自己反応性物質
II 第2種自己反応性物質
第6類 I すべて(例:過塩素酸、過酸化水素、硝酸)

積載方法:容器への収納方法

危険物を車両に積載するときは、 どのような容器に・どのくらいの割合で収納するかが決められています。 代表的なルールを、原則と例外に分けて整理しておきましょう。

  1. 原則 危険物は運搬容器に収納して積載します。

    危険物は、原則として運搬容器に収納して積載します。 むき出しのまま積むことはできません。

    例外
    • 塊状の硫黄等を運搬するために積載する場合。
    • 同一の敷地内で、 製造所等から同一敷地内の他の製造所等へ 運搬するために積載する場合。
  2. 原則 容器は密封して収納します。

    温度変化などによっても内容物が漏れないよう密封して収納します。

    例外

    温度変化等でガスが発生して内圧が上昇するおそれがある場合は、 毒性や引火性の危険がないときに限りガス抜き口(危険物の漏えい・他物質の浸透を防止する構造) を設けた運搬容器に収納することができます。

  3. 原則 危険物の性質に適合する容器材質を用います。

    収納する危険物と危険な反応を起こさないなど、 当該危険物の性質に適合する材質の運搬容器を使用します。

  4. 原則 固体は容器内容積の95%以下で収納します。

    固体の危険物は、原則として運搬容器の内容積の 95%以下の収納率で収納します。

  5. 原則 液体は98%以下で、55℃でも漏れない空間を確保します。

    液体の危険物は、運搬容器の内容積の98%以下で収納し、 55℃においても漏れないよう、十分な 空間容積(ウレージ)を確保します。

  6. 禁止 ひとつの外装容器に異なる類の混載はできません。

    ひとつの外装容器には、原則として 類を異にする危険物を収納してはなりません。

積載方法:容器表示

危険物は、原則として運搬容器の外部に、次の事項を表示して積載します。

運搬容器の外側に表示すべき事項

運搬容器の外側に表示すべき事項は次のとおりです。

  1. 危険物の品名
  2. 危険等級
  3. 化学名
  4. (第4類のみ)水溶性のものは 「水溶性」
  5. 危険物の数量
  6. 収納する危険物に応じた 注意事項
補足:機械荷役用の運搬容器

機械により荷役する構造を有する運搬容器の外部には、上記に加えて 製造年月日および製造者の名称なども表示しなければなりません。

収納する危険物に応じた注意事項

収納する危険物に応じた注意事項
類別等 品名 注意事項
第1類
酸化性固体
アルカリ金属の過酸化物/
これらの含有品
火気・衝撃注意 禁水 可燃物接触注意
その他のもの 火気・衝撃注意 可燃物接触注意
第2類
可燃性固体
金属粉/マグネシウム/
鉄粉/これらの含有品
火気注意 禁水
引火性固体 火気厳禁
その他のもの 火気注意
第3類
自然発火性物質
すべて 空気接触厳禁 火気厳禁
第3類
禁水性物質
すべて 禁水
第4類
引火性液体
すべて 火気厳禁
第5類
自己反応性物質
すべて 火気厳禁 衝撃注意
第6類
酸化性液体
すべて 可燃物接触注意
補足:収納する危険物に応じた注意事項の注記

第1類のうち、アルカリ金属の過酸化物(過酸化カリウム・過酸化ナトリウムなど)は水と反応して酸素と熱を発生します。

  1. 原則 落下・転倒・破損を防ぐように積載します。

    危険物が転落したり、危険物を収納した運搬容器が落下・転倒・破損しないように、確実に固定して積載します。

  2. 原則 収納口は上向きで積載します。

    運搬容器は、収納口を上方に向けて積載します。

  3. 必須 日光の直射を避けるため遮光性の被覆で覆います。

    次の危険物は、日光の直射を避けるため遮光性の被覆で覆わなければなりません。

    • 第1類の危険物
    • 第3類のうち自然発火性物質
    • 第4類のうち特殊引火物
    • 第5類の危険物
    • 第6類の危険物
  4. 禁止 危険物と高圧ガスは混載できません。

    危険物と高圧ガスは、原則として混載してはなりません

    例外

    ただし、内容積が120L未満の容器に充てんされた高圧ガスについては、この限りではありません。

  5. 禁止 同一車両で災害のおそれのある物品と混載しません。

    危険物は、同一車両で災害を発生させるおそれのある物品を混載しません。

  6. 必須 第3類 自然発火性物質は空気に触れさせません。

    第3類危険物の自然発火性物質は、不活性ガスを投入して密封するなど、空気と接しないようにします。

混載してはならない危険物(類別マトリクス)

同一車両で類を異にする危険物を運搬するとき、次の組合せは 混載不可です(対称・NG優先で正規化)。
指定数量の1/10以下の危険物には適用しません。

類別マトリクス
類別 第1類 第2類 第3類 第4類 第5類 第6類
第1類 不可 不可 不可 不可
第2類 不可 不可 不可
第3類 不可 不可 不可 不可
第4類 不可 不可
第5類 不可 不可 不可
第6類 不可 不可 不可 不可

:混載して差し支えありません。
不可:混載できません。

  • 上表の適用除外:指定数量の1/10以下の危険物。
  • 積み重ねは高さ3以下とします。

出る出るポイント!

  • 【適用範囲】運搬の基準は指定数量未満にもかかってくる。 ただし運搬そのものには届出・許可はいらない。ここはセットで押さえておく。
  • 【収納率】収納率は 固体95%以下・液体98%以下。 さらに55℃でも漏れない空間容積(ウレージ)を取っておくイメージ。
  • 【容器の向き】運搬容器の収納口は必ず上向きで積む。 上以外は全部アウト、くらいの感覚で覚えておく。
  • 【遮光】遮光性の被覆が必要なのは, 第1類第3類の自然発火性物質第4類の特殊引火物第5類第6類のセット。 「1・3自発火・4特引・5・6」でワンパックにしておく。
  • 【容器表示】第4類の水溶性はラベルに 「水溶性」とちゃんと書く。 機械荷役容器はさらに 製造年月日・製造者名も追加表示,ここまでがフルセット。

ひっかけ注意!

  • 【容器性能試験】機械荷役容器は,ふつうの 落下・気圧・内圧・積み重ねに加えて, 底部持ち上げ/頂部つり上げ/裂け伝播/引き落とし/引き起こし までまとめて見られる。 「こんなにやるのか…」くらいの長いセットとして覚えておくと迷わない。
  • 【混載マトリクス】例外で「混載可」になるのは 1⇔6・2⇔5・3⇔4・2⇔4・4⇔5だけ。 それ以外は全部「不可」側と決め打ちしておくと早い。 さらに指定数量の1/10以下の危険物は この表そのものの適用外になる点もひっかけポイント。
  • 【その他の禁止・例外】 危険物と高圧ガス原則いっしょに積まない(混載不可)。 ただし内容積120L未満容器の高圧ガスだけは例外パターンで混載OK。 それと積み重ねは高さ3以下まで,という数字もセットで覚えておく。

運搬方法

  • 原則 摩擦・動揺を著しく生じさせないように運搬します。

    危険物または危険物を収納した運搬容器が、著しく摩擦または動揺を起こさないように運搬します。 荷締め・滑り止め・当て木などで確実に固定します。

  • 必須 指定数量以上を車両で運搬するときの規制

    1. 標識の掲示:車両の前後の見やすい箇所に掲げます。
      危険物を運搬するときに掲げる標識の例

      仕様:一辺0.3m黒色の板に、 黄色の反射塗料(又は反射材料)で 「危」と表示したもの。

    2. 一時停止時の安全確保:積替え・休憩・故障などで停止するときは、 安全な場所を選定し、運搬する危険物の保安に注意します。
    3. 消火設備:運搬する危険物に適合する消火設備を備えます。

運搬方法の注意点

  • 運搬中に漏えいなどで災害のおそれがあると感じたときは、 まず可能な範囲で応急措置をとり、続けて最寄りの 消防機関等へ通報します。
  • 複数の品名を積むときは、各危険物の数量をそれぞれの指定数量で割り、 その合計が1以上になったら「指定数量以上」 とみなします(合算規定)。
  • 運搬とは、容器に詰めた危険物を車両で運ぶ行為です。 原則として危険物取扱者の同乗は不要ですが、 積み卸しで指定数量以上を扱う場合は、 取扱者が自ら作業を行うか立会いをしなければなりません。
  • 移送とは、移動タンク貯蔵所(タンクローリー)での輸送を指し、 危険物取扱者の同乗が必要です。 「運搬」との違いを混同しないようにします。
  • 指定数量の1/10以下の危険物は、 このページの混載マトリクスの対象外ですが、 運搬の基準そのものは数量にかかわらず適用されます。
  • 容器の積み重ねは高さ3以下(おおむね3段まで)にとどめて積載します。

出る出るポイント!

  • 【適用範囲】 運搬の基準は指定数量に関係なく全部にかかる。 少なくてもアウトラインは同じ。 ただし運搬そのものは届出・許可いらない、このセットで覚えておく。
  • 【収納率&向き】 固体95%/液体98%+55℃がド定番。 容器の空間容積をきちんと残す収納口は上向きで積む、ここまでワンセット。
  • 【遮光】 遮光性の被覆が必須なのは 1類・3類(自然発火性)・4類(特殊引火物)・5類・6類の5グループ。 並びでゴロっと覚えてしまう。
  • 【容器表示】 外側表示は 「品名/等級/化学名/数量/注意事項」+ 第4類だけ「水溶性」を追加。 さらに機械荷役容器だけは 製造年月日・製造者名がオマケで付く。
  • 【指定数量以上の運搬】 「危」標識(黒板0.3m角+黄色反射)を 車両の前後に掲げる/ 危険物に合った消火設備を積む/ 停止するときは安全な場所を選ぶ。 この三点セットを落とさない。

ひっかけ注意!

  • 【混載マトリクス】 テーブルはほとんどNG、OKはごく一部って世界観だけキープ。 細かいペアは上の「出る出る」でチェックするイメージ。 本番のひっかけは 「指定数量1/10以下なのに表のNGを当てはめてくる」とか、 「高さ3以下の積み重ねルールまで外してくる」あたりを狙ってくる。
  • 【運搬と移送】 運搬=容器入り危険物を車で運ぶだけなら、 原則取扱者の同乗はいらないのが基本ライン。 でも積み卸しが指定数量以上に触れた瞬間、 取扱者が自分でやるか立ち会うことが条件になる。 いっぽう移送(タンクローリー)最初から同乗必須。 ここを入れ替えた選択肢は、見た瞬間にバッサリ切り捨てたいポイント。
  • 【数量の合算ルール】 複数品名をまとめて運ぶときは、 それぞれの数量を各指定数量で割って足し算、合計1以上なら指定数量以上扱い。 「足し算なのに平均を取らせる」「指定数量じゃなくて容量で割らせる」 みたいな書き換えは全部ひっかけ候補。

クイズ

運搬する時に第4類の危険物と混載してはならない危険物は次のうちどれか。

次は第1章37節:消火設備と設置基準に進みます。

消火設備と設置基準