運搬の基準
運搬容器:材質・構造・最大容積
危険物は容器に収納して運搬しなければなりません。危険物の性状・危険性・数量に応じた 容器の材質・構造・最大容積は、政令で定められています。
材質
運搬容器の材質として、次のようなものが認められています。
- 鋼板、アルミニウム板、ぶりき板、ガラス、金属板
- 紙、プラスチック、ファイバ板、ゴム板
- 合成繊維、麻、木、陶磁器
構造
容器は堅固で、容易に破損しないこと、また口部から内容物が漏れない構造であることが必要です。 構造および最大容積は、容器の区分ごとに細かく規定されています。
性能試験
容器は告示で定める試験に適合する必要があります。
- 機械荷役構造を有しない容器
- 落下試験 / 気密試験 / 内圧試験 / 積み重ね試験
- 機械荷役構造を有する容器
- 落下試験 / 気密試験 / 内圧試験 / 積み重ね試験 / 底部持ち上げ試験 / 頂部つり上げ試験 / 裂け伝播試験 / 引き落とし試験 / 引き起こし試験
危険等級と容器の適合
危険物は危険性の程度に応じて危険等級 I・II・IIIに区分され、 危則別表第3の2に基づき適合する容器が定められています。
例:灯油・軽油(危険等級 III)→ ガラス容器、プラスチック容器、金属製容器 など
特例(内装容器+外装容器)
- 第4類の第3石油類・第4石油類・動植物油類: プラスチックフィルム袋を内装容器とし、 木箱・プラスチック箱・ファイバ板箱の外装容器に収納したものは 特例として運搬容器と認められます。
- 第4類のアルコール類: 最大容積1L以下のプラスチックフィルム袋を内装容器とし、 ファイバ板箱(不活性の緩衝材入りに限る)を外装容器にしたものは 特例として運搬容器と認められます。
危険等級
| 類別 | 等級 | 品名等 |
|---|---|---|
| 第1類 | I | 第1種酸化性固体 |
| II | 第2種酸化性固体 | |
| III | 第3種酸化性固体 | |
| 第2類 | II | 第1種可燃性固体(例:硫化りん、赤りん、硫黄 など) |
| III | 第2種可燃性固体(II 以外のもの) | |
| 第3類 | I | 第1種自然発火性・禁水性物質(例:黄りん、アルキルアルミニウム、アルキルリチウム、カリウム、ナトリウム など) |
| II | 第2種・第3種自然発火性・禁水性物質(I 以外のもの) | |
| 第4類 | I | 特殊引火物 |
| II | 第1石油類、アルコール類 | |
| III | 第2〜4石油類・動植物油類 | |
| 第5類 | I | 第1種自己反応性物質 |
| II | 第2種自己反応性物質 | |
| 第6類 | I | すべて(例:過塩素酸、過酸化水素、硝酸) |
積載方法:容器への収納方法
-
原則 危険物は運搬容器に収納して積載します。
危険物は、原則として運搬容器に収納して積載します。
例外- 塊状の硫黄等を運搬するために積載する場合。
- 同一の敷地内で、製造所等から同一敷地内の他の製造所等へ運搬するために積載する場合。
-
原則 容器は密封して収納します。
温度変化などにより内容物が漏れないよう密封して収納します。
例外温度変化等でガスが発生して内圧が上昇するおそれがある場合は、毒性や引火性の危険がないときに限り、 ガス抜き口(危険物の漏えい・他物質の浸透を防止する構造)を設けた運搬容器に収納できます。
-
原則 危険物の性質に適合する容器材質を用います。
収納する危険物と危険な反応を起こさないなど、当該危険物の性質に適合する材質の運搬容器を使用します。
-
原則 固体は容器内容積の95%以下で収納します。
固体の危険物は、原則として運搬容器の内容積の95%以下の収納率で収納します。
-
原則 液体は98%以下で、55℃でも漏れない空間を確保します。
液体の危険物は、運搬容器の内容積の98%以下で収納し、 55℃においても漏れないよう、十分な空間容積(ウレージ)を確保します。
-
禁止 ひとつの外装容器に異なる類の混載はできません。
ひとつの外装容器には、原則として類を異にする危険物を収納してはなりません。
積載方法:容器表示
危険物は、原則として運搬容器の外部に、次の事項を表示して積載します。
運搬容器の外側に表示すべき事項
- 危険物の品名
- 危険等級
- 化学名
- (第4類のみ)水溶性のものは 「水溶性」
- 危険物の数量
- 収納する危険物に応じた 注意事項
補足:機械荷役用の運搬容器
機械により荷役する構造を有する運搬容器の外部には、上記に加えて 製造年月日および製造者の名称なども表示しなければなりません。
収納する危険物に応じた注意事項
| 類別等 | 品名 | 注意事項 |
|---|---|---|
| 第1類 酸化性固体 | アルカリ金属の過酸化物、これらの含有品 | 火気・衝撃注意 禁水 可燃物接触注意 |
| その他のもの | 火気・衝撃注意 可燃物接触注意 | |
| 第2類 可燃性固体 | 鉄粉・金属粉・マグネシウム・これらの含有品 | 火気注意 禁水 |
| 引火性固体 | 火気厳禁 | |
| その他のもの | 火気注意 | |
| 第3類 自然発火性物質 | すべて | 空気接触厳禁 火気厳禁 |
| 第3類 禁水性物質 | すべて | 禁水 |
| 第4類 引火性液体 | すべて | 火気厳禁 |
| 第5類 自己反応性物質 | すべて | 火気厳禁 衝撃注意 |
| 第6類 酸化性液体 | すべて | 可燃物接触注意 |
補足:収納する危険物に応じた注意事項の注記
第1類のうち、アルカリ金属の過酸化物(過酸化カリウム・過酸化ナトリウムなど)は水と反応して酸素と熱を発生します。
-
原則 落下・転倒・破損を防ぐように積載します。
危険物が転落したり、危険物を収納した運搬容器が落下・転倒・破損しないように、確実に固定して積載します。
-
原則 収納口は上向きで積載します。
運搬容器は、収納口を上方に向けて積載します。
-
必須 日光の直射を避けるため遮光性の被覆で覆います。
次の危険物は、日光の直射を避けるため遮光性の被覆で覆わなければなりません。
- 第1類の危険物
- 第3類のうち自然発火性物質
- 第4類のうち特殊引火物
- 第5類の危険物
- 第6類の危険物
-
禁止 危険物と高圧ガスは混載できません。
危険物と高圧ガスは、原則として混載してはなりません。
例外ただし、内容積が120L未満の容器に充てんされた高圧ガスについては、この限りではありません。
-
禁止 同一車両で災害のおそれのある物品と混載しません。
危険物は、同一車両で災害を発生させるおそれのある物品を混載しません。
-
必須 第3類 自然発火性物質は空気に触れさせません。
第3類危険物の自然発火性物質は、不活性ガスを投入して密封するなど、空気と接しないようにします。
禁止 混載してはならない危険物(類別マトリクス)
同一車両で類を異にする危険物を運搬するとき、次の組合せは
混載不可です(対称・NG優先で正規化)。
※ 指定数量の1/10以下の危険物には適用しません。
| 類別\類別 | 第1類 | 第2類 | 第3類 | 第4類 | 第5類 | 第6類 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 第1類 | — | 不可 | 不可 | 不可 | 不可 | 可 |
| 第2類 | 不可 | — | 不可 | 可 | 可 | 不可 |
| 第3類 | 不可 | 不可 | — | 可 | 不可 | 不可 |
| 第4類 | 不可 | 可 | 可 | — | 可 | 不可 |
| 第5類 | 不可 | 可 | 不可 | 可 | — | 不可 |
| 第6類 | 可 | 不可 | 不可 | 不可 | 不可 | — |
可:混載して差し支えありません 不可:混載できません
- 上表の適用除外:指定数量の1/10以下の危険物。
- 積み重ねは高さ3以下とします。
頻出ポイント/ひっかけ注意
- 【適用範囲】運搬の基準は指定数量未満にも適用します(運搬は届出・許可不要)。
- 【容器性能試験】機械荷役ありの容器は、落下・気密・内圧・積み重ねに加え底部持上げ/頂部つり上げ/裂け伝播/引き落とし/引き起こしも必要です。
- 【収納率】固体95%以下、液体98%以下+55℃で漏れない空間容積(ウレージ)を確保します。
- 【容器向き】運搬容器の収納口は必ず上向きで積載します。
- 【遮光】次は遮光性の被覆が必須:第1類/第3類の自然発火性/第4類の特殊引火物/第5類/第6類。
- 【容器表示】第4類で水溶性は「水溶性」と表示。機械荷役容器は製造年月日・製造者名も追加表示します。
- 【混載マトリクス】例外を覚える:1⇔6、2⇔5、3⇔4、2⇔4、4⇔5は可。それ以外は不可。※指定数量の1/10以下は表の適用外です。
- 【その他の禁止・例外】高圧ガスとの混載は原則不可(ただし内容積120L未満容器の高圧ガスは可)。積み重ねは高さ3以下です。
運搬方法
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原則 摩擦・動揺を著しく生じさせないように運搬します。
危険物または危険物を収納した運搬容器が、著しく摩擦または動揺を起こさないように運搬します。 荷締め・滑り止め・当て木などで確実に固定します。
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必須 指定数量以上を車両で運搬するときの規制
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標識の掲示:車両の前後の見やすい箇所に掲げます。
仕様:一辺0.3mの黒色の板に、黄色の反射塗料(又は反射材料)で 「危」と表示したもの。
- 一時停止時の安全確保:積替え・休憩・故障などで停止するときは、 安全な場所を選定し、運搬する危険物の保安に注意します。
- 消火設備:運搬する危険物に適合する消火設備を備えます。
-
標識の掲示:車両の前後の見やすい箇所に掲げます。
運搬方法の注意点
- 運搬中に漏えい等で災害のおそれがあるときは、応急措置を講じ、最寄りの消防機関等へ通報します。
- 複数品名の合算規定:各危険物の数量を各指定数量で割り、その和が1以上なら指定数量以上とみなします。
- 運搬は容器詰めの危険物を車両で運ぶことです。原則、危険物取扱者の同乗は不要です(ただし積み卸しで指定数量以上の場合は、取扱者が自ら行うか立会いが必要です)。
- 移送は移動タンク貯蔵所(タンクローリー)による輸送で、危険物取扱者の同乗が必要です。用語を混同しないでください。
- 指定数量の1/10以下の危険物は混載表の適用外です(ただし運搬の基準自体は数量を問わず適用されます)。
- 積み重ねは高さ3以下で積載します。
頻出ポイント/ひっかけ注意
- 【適用範囲】運搬の基準は指定数量未満にも適用します(運搬は届出・許可不要)。
- 【収納率&向き】固体95%・液体98%+55℃で漏れない空間容積を確保/収納口は上向きで積載します。
- 【遮光】遮光性の被覆が必須:第1類/第3類(自然発火性)/第4類(特殊引火物)/第5類/第6類。
- 【容器表示】外側表示:品名・等級・化学名・(第4類は水溶性)・数量・注意事項。
※機械荷役容器は製造年月日・製造者名を追加表示します。 - 【混載マトリクス】覚える“可”のペア:1⇔6・2⇔5・3⇔4・2⇔4・4⇔5。それ以外は不可。
※指定数量1/10以下は表の適用外/積み重ねは高さ3以下。 - 【指定数量以上の運搬】「危」標識(黒板0.3m角+黄色反射)を車両前後に掲示/適合消火設備を備える/停止時は安全な場所を選定。
※運搬は同乗不要、ただし積み卸しが指定数量以上は取扱者の自ら実施・立会いが必要。移送(タンクローリー)は同乗必須。
クイズ
次は第1章37節:消火設備と設置基準に進みます。