燃えやすい要素
酸化反応を起こしやすい物質(例:水素や炭素など)は燃焼しやすいです。空気と接触する表面積が大きいほど、酸素と反応しやすくなり燃焼が促進されます。
発熱量が大きい物質は、燃焼時に多くの熱エネルギーを放出しやすいです。発熱量とは1モルの物質が完全燃焼したときに発生する熱量で、例えば C(黒鉛) + O₂ → CO₂ では約395 kJになります。
加熱によって熱分解や蒸発を起こし、可燃性の蒸気を容易に発生させる物質は着火しやすいです。液体ガソリンや固体硫黄は、このように蒸気を出して燃える典型例です。
熱伝導率が低い物質は熱を逃しにくいため、その場に熱が蓄積されやすく燃焼しやすくなります。熱伝導率とは物質が熱を伝える度合いを示す値で、金属は高く、液体や気体になるほど低くなります。
沸点が低い物質は常温でも容易に気化し、可燃性蒸気を発生させるため着火しやすいです。含水量が少なく乾燥した物質は、水分の蒸発に要する熱が少ない分だけ温度が速く上昇し、燃焼が促進されます。
周囲温度が高い環境では化学反応速度が速くなるため、酸化反応が進みやすく燃焼が起こりやすくなります。
酸素濃度が高いほど酸化反応が促進され燃焼が激しくなります。逆に酸素濃度が約14~15%以下になると、多くの可燃性物質は燃焼を維持できなくなります。
熱容量は物質全体を1K上昇させるのに必要な熱量で、比熱は物質1gを1K上昇させるのに必要な熱量を示します。いずれも小さいほど少ない熱で温度が上がるため、燃えやすくなります。
項目 | 説明 | ポイント |
---|---|---|
酸化され易さ | 水素や炭素など、酸化反応を起こしやすい物質 | 酸化力の高いものほど燃焼しやすい |
接触面積 | 空気と接する表面積の大きさ | 表面積が大きいほど酸素と反応しやすい |
発熱量 | 1モル完全燃焼あたりの反応熱(例:C + O₂ → CO₂ + 395 kJ) | 大きいほど大量の熱を放出 |
可燃性蒸気の発生 | 熱分解や蒸発により可燃性蒸気を出す性質(ガソリン・硫黄など) | 蒸気を発生しやすいほど着火しやすい |
熱伝導率 | 熱を逃がしにくい性質(液体・気体は低く、金属は高い) | 低いほど熱が蓄積しやすい |
沸点 | 常温で気化しやすいかどうか | 低いほど蒸発燃焼しやすい |
含水量 | 乾燥しているほど燃焼しやすい | 水分が少ないほど温度上昇が早い |
周囲温度 | 環境温度が高いほど化学反応速度が速くなる | 高温ほど燃焼が起こりやすい |
酸素濃度 | 空気中の酸素割合(21%→高いほど激しく、15%以下で消火) | 濃度が高いほど燃焼が激化 |
熱容量・比熱 | 物質の温度を1K上昇させるのに必要な熱量 | 小さいほど少ない熱で温度上昇し、燃えやすい |
燃焼の難易に影響しない要素
体膨張率は、温度を1°C上げたときの体積増加の割合を示す指標です。この性質は物質の膨張挙動を表しますが、燃焼のしやすさには直接関係しません。
燃焼の抑制
燃焼の抑制とは、可燃物の原子レベルで反応性を低下させ、燃焼連鎖を断つ作用を指します。このメカニズムは負触媒作用とも呼ばれます。
※「不活性」とは、化学反応を起こしにくい性質を表し、化学的に安定または反応速度が遅い状態をいいます。
燃焼抑制に利用される代表的な元素にハロゲンがあります。ハロゲンとはフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)などを指し、いずれも電子を受け取りやすい陰イオン性を示すことで強い酸化作用を発揮します。
燃焼熱
燃焼熱とは、物質が完全燃焼したときに放出される熱量のことで、質量あたりまたは物質量あたりで表します。すべての燃焼反応は発熱反応です。
物理分野では「1gあたり」、化学分野では「1モルあたり」の熱量で示すのが一般的です。
最小着火エネルギー
可燃性ガスと空気の混合気に火花放電を与えたとき、放電エネルギーがある閾値を超えると着火・爆発が起こります。この閾値を最小着火エネルギーといいます。
着火に必要なエネルギーは、可燃性物質の濃度や粒度、形状、温度などの条件によって変化します。最も着火しやすい混合比(下限爆発濃度)でのエネルギー量を最小着火エネルギーとし、この値が小さいほど危険性が高まります。
※閾値(しきい値)とは、反応を開始させるために必要な最小限のエネルギーや強度のことです。
危険因子のまとめ
数値が小さいほど危険な因子 | 数値が大きいほど危険な因子 |
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発火点 / 引火点 / 沸点 / 比熱 / 熱容量 / 燃焼範囲の下限界 / 最小着火エネルギー / 電気伝導度(電気伝導率・動電率ともいう) |
燃焼範囲(広い) / 燃焼速度(速い) / 燃焼熱 / 蒸気圧 / 火炎伝播速度(速い) |
クイズ
次のうち、数値が小さいほど危険な因子に該当しないものはどれか?
次は引火と発火に進みます。