燃えやすい要素

可燃物がどれくらい燃えやすいかは、 物質そのものの性質と周囲の条件によって決まります。 主な要素は次のとおりです。

  1. 酸化されやすさ
    酸化反応を起こしやすい物質(例:水素や炭素など)は燃焼しやすくなります。 空気と接触する表面積が大きいほど酸素と反応しやすく、燃焼が促進されます。
  2. 発熱量の大きさ
    発熱量が大きい物質は、燃焼時に多くの熱エネルギーを放出しやすくなります。 発熱量とは1モルの物質が完全燃焼したときに発生する熱量で、 例えば C(黒鉛) + O₂ → CO₂ では約395 kJ になります。
  3. 蒸発・熱分解しやすさ
    加熱によって熱分解や蒸発を起こし、可燃性の蒸気を容易に発生させる物質は着火しやすくなります。 液体ガソリンや固体硫黄は、このように蒸気を出して燃える代表例です。
  4. 熱伝導率の低さ
    熱伝導率が低い物質は熱を逃しにくく、その場に熱がたまりやすいため燃焼しやすくなります。 熱伝導率とは物質が熱を伝える度合いを示す値で、金属は高く、液体や気体は低い性質があります。
  5. 沸点の低さ・乾燥の程度
    沸点が低い物質は常温でも容易に気化し、可燃性蒸気を発生させるため着火しやすくなります。 また、含水量が少なく乾燥した物質は、水分の蒸発に必要な熱が少ない分だけ温度が速く上昇し、 燃焼が促進されます。
  6. 周囲温度の高さ
    周囲温度が高い環境では化学反応速度が速くなるため、 酸化反応が進みやすく燃焼が起こりやすくなります。
  7. 酸素濃度
    酸素濃度が高いほど酸化反応が促進され、燃焼は激しくなります。 逆に酸素濃度が約14〜15%以下になると、 多くの可燃性物質は燃焼を維持できなくなります。
  8. 熱容量・比熱
    熱容量は物質全体を1 K上昇させるのに必要な熱量で、 比熱は物質1 gを1 K上昇させるのに必要な熱量を示します。 いずれも値が小さいほど少ない熱で温度が上がるため、燃えやすくなります。

出る出るポイント

  • 酸素濃度14〜15%付近で多くの可燃物が燃焼を維持できなくなる」値は要暗記。
  • 表面積が大きい・乾燥している・周囲温度が高い」と燃えやすくなる、という方向性を押さえておく。
  • 熱容量・比熱は「小さいほど少ない熱で温度が上がる=燃えやすい」とワンセットで覚える。

燃えやすい要素

燃えやすい要素のまとめ
項目 説明 ポイント
酸化されやすさ 水素や炭素など、酸化反応を起こしやすい物質 酸化されやすい物質ほど燃焼しやすい
接触面積 空気と接する表面積の大きさ 表面積が大きいほど酸素と反応しやすい
発熱量 1モルの物質が完全燃焼したときに発生する熱量 (例:C + O₂ → CO₂ + 395 kJ) 大きいほど放出される熱エネルギーが大きい
可燃性蒸気の発生 熱分解や蒸発により可燃性蒸気を出す性質(ガソリン・硫黄など) 蒸気を発生しやすいほど着火しやすい
熱伝導率 熱をどの程度伝えやすいかを示す性質(液体・気体は低く、金属は高い) 低いほど熱がその場にたまりやすい
沸点 常温で気化しやすいかどうか 低いほど蒸発燃焼しやすい
含水量 物質に含まれる水分の多さ(乾燥しているほど水分が少ない) 水分が少ないほど温度上昇が早く燃えやすい
周囲温度 環境温度が高いほど化学反応速度が速くなる 高温ほど燃焼が起こりやすい
酸素濃度 空気中の酸素の割合(通常は約21%。高いほど燃焼は激しく、 約14〜15%以下で多くの可燃性物質は燃焼を維持できない) 濃度が高いほど燃焼が激しくなる
熱容量・比熱 物質全体または1gの温度を1K上昇させるのに必要な熱量 小さいほど少ない熱で温度が上がり、燃えやすい

ひっかけ注意!

  • 熱伝導率は 「低いほど燃えやすい」が正解。 選択肢で「高いほど燃えやすい」と書いてあったらバツ。
  • 含水量は 「水分が少ない=燃えやすい」。 「湿っているほど燃えやすい」は完全に逆向き。
  • 酸素濃度は 「高いほど燃焼が激しい」+ 「約14〜15%以下で多くの可燃物は燃焼を維持できない」 という数字セットで狙われやすい。
  • 熱容量・比熱 vs 発熱量も要注意。 「発熱量:大きいほど燃えやすい」 「熱容量・比熱:小さいほど燃えやすい」と、 方向が逆なので混同しやすい。

燃焼の難易に影響しない要素

燃焼のしやすさには、ほとんど関係しない性質もあります。 代表例が体膨張率です。

体膨張率は、温度を1℃上げたときの体積増加の割合を示す指標で、 物質の膨張挙動を表しますが、燃えやすさそのものには直接関係しません。

燃焼の抑制

燃焼の抑制とは、可燃物の反応性を低下させて 燃焼反応の連鎖を途中で断ち、燃焼を進みにくくする作用を指します。 このメカニズムは負触媒作用とも呼ばれます。

※「不活性」とは、化学反応を起こしにくい性質を表し、 化学的に安定または反応速度が遅い状態をいいます。

燃焼抑制に利用される代表的な元素にハロゲンがあります。 ハロゲンとはフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)などを指し、 いずれも電子を受け取る性質が強く、酸化剤として働くことで 燃焼反応の連鎖を断ち切るのに利用されます。

出る出るポイント!

  • 体膨張率」は 燃焼の難易には直接関係しない性質として押さえておく。
  • 燃焼の抑制=可燃物の反応性を下げて 燃焼反応の連鎖を断つ働きであり、 名称は負触媒作用
  • 燃焼抑制に利用される代表的な元素は ハロゲン(F, Cl, Br, I)。 「ハロゲン一族が抑制役」とセットで覚える。

ひっかけ注意!

  • 「体膨張率が大きいほど燃えやすい」など、 体膨張率を燃焼の難易と結びつける選択肢は×
  • 燃焼の抑制を単に「触媒作用」としている選択肢も×。 正しくは負触媒作用である。

燃焼熱

燃焼熱とは、物質が完全燃焼したときに放出される熱量のことで、 一定の質量あたりまたは一定の物質量あたりで表します。すべての燃焼反応は発熱反応です。

物理分野では「1gあたり」、化学分野では「1モルあたり」の熱量で示すのが一般的です。

最小着火エネルギー

可燃性ガスと空気の混合気に火花放電を与えたとき、 放電エネルギーがある閾値を超えると着火・爆発が起こります。 この閾値を最小着火エネルギーといいます。

着火に必要なエネルギーは、可燃性物質の濃度や粒度、形状、温度などの条件によって変化します。 最も着火しやすい混合比(下限爆発濃度付近)でのエネルギー量を最小着火エネルギーとし、 この値が小さいほど危険性が高くなります。

閾値(しきい値)とは、反応を開始させるために必要な最小限のエネルギーや強度のことです。

これらの物性値のうち、「値が小さいほど危険」「値が大きいほど危険」となるものは、 下の一覧でまとめて整理しておきましょう。

数値が小さいほど危険な因子

  • 発火点
  • 引火点
  • 沸点
  • 比熱
  • 熱容量
  • 燃焼範囲の下限界
  • 最小着火エネルギー
  • 電気伝導度(電気伝導率・動電率ともいう)

数値が大きいほど危険な因子

  • 燃焼範囲(広い)
  • 燃焼速度(速い)
  • 燃焼熱
  • 蒸気圧
  • 火炎伝播速度(速い)

クイズ

次のうち、「数値が小さいほど危険な因子」には 該当しないものはどれか。

次は第2章4節:引火と発火に進みます。

引火と発火