抵抗率 ρ(ロー)
抵抗の基本関係:
導体の抵抗 R は「長さ l に比例」「断面積 S に反比例」。 物質ごとの固有値 ρ(抵抗率) を用いると、次式で表されます。
R = ρ · l / S
確認ポイント
- ρ は物質固有値(材質で決まる)。
- 定義:断面積 1 m²、長さ 1 mの導体の両端の抵抗。
- 長さ l と断面積 S の影響は逆方向(l↑→R↑、S↑→R↓)。
- 単位は Ω・m(オーム・メートル)。
導電率 σ(シグマ)
導電率(電気伝導率)は、物質の電気の流れやすさを表す量です。 値が大きいほど電気を通しやすく、抵抗は小さくなります。
導電率は抵抗率(流れにくさ)ρの逆数で、 σ = 1 / ρ。単位は S/m(ジーメンス毎メートル)。
形状に依存する実際の通しやすさ(コンダクタンス)は G = σ·A/L(A:断面積、L:長さ)。抵抗は R = ρ·L/A。 つまり 「材質(σ)×形状」で決まります。
液体(電解質)では塩分や酸の濃さの指標として用います。 例:食塩水は濃いほど σ↑(※通常は 25℃ への温度換算で管理)。
σ = 1 / ρ
確認ポイント
- 定義:導電率は通しやすさ、抵抗率は通しにくさ。
σ = 1/ρ。 - 形状との関係:R = ρ·L/A、G = σ·A/L。材質と形状をセットで考える。
- 大小関係の直感:σ↑ ⇒ R↓(通電良好)。金属 > 電解質溶液 > 純水・絶縁体。
- 温度依存:金属はT↑でσ↓(散乱↑)、電解質溶液はT↑でσ↑(移動度↑)。
- 単位の実務表記:測定器は mS/cm を多用。
1 mS/cm = 0.1 S/m(1000 μS/cm = 0.1 S/m)。 - 測定のコツ:塩分換算は“温度補正(25℃換算)+ 検量線”。条件が違うと数値はずれる。
オームの法則
オームの法則は、抵抗を流れる電流 I がその両端の電圧 V に比例し、 抵抗 R に反比例する関係を表します。式は V = I・R です。
ここでの単位は、V:ボルト [V]、I:アンペア [A]、 R:オーム [Ω] を用います。直流(DC)または低周波で、温度がほぼ一定の 「オーム性(線形)抵抗」に適用します。
確認ポイント
- 適用範囲:オーム性(線形)抵抗に適用します。温度が上がると抵抗値が変わる場合があり、厳密には V–I が直線でない素子(電球・半導体・整流器など)にはそのまま当てはめません。
- 単位整合:V [V]、I [A]、R [Ω]。ミリ・キロなどの接頭語に注意しましょう(例:mA=10−3A)。
- 電力の関係:P = V・I = I2R = V2/R。計算の近道として使います。
- 直列・並列の前提:直列は電流一定・電圧分担、並列は電圧一定・電流分担。合成後に V=I・R を当てます。
- 温度依存:金属抵抗は温度上昇で R が増える傾向があります(電球が冷間時に低抵抗なのはこのためです)。
- 測定のコツ:テスターの内部抵抗やリード線抵抗が結果に影響します。精密計算では配線抵抗もモデル化します。
直列と並列の合成抵抗
抵抗のつなぎ方には直列と並列があります。直列は同じ電流が順番に流れます。 並列は同じ電圧が各枝にかかります。合成(等価)抵抗は次の式で求めます。
直列の定義
- 各抵抗に流れる電流は同じです(電流一定)。
- 電圧は抵抗値に比例して分担します(電圧分割)。
- 合成抵抗は足し算です: Req = R1 + R2 + R3 + …
並列の定義
- 各抵抗にかかる電圧は同じです(電圧一定)。
- 電流は抵抗値に反比例して分流します(電流分割)。
- 合成抵抗は逆数の和です: 1/Req = 1/R1 + 1/R2 + 1/R3 + …
確認ポイント
- 直列:電流はどこでも同じ、電圧は分かれて足し算になります。
- 並列:電圧はどこでも同じ、電流は枝ごとに分かれて合流します。
- 見分け:直列は「一本道」、並列は「同じ始点・終点に枝が並ぶ」。
- 直列の電圧分割:Vk = V·Rk / Req です。合計は元の電圧になります。
- 並列の電流分割:Ik = I·(R他/(Rk+R他))(2枝のとき)。抵抗が小さい枝ほど電流が多く流れます。
- ショート/オープンの極端値:直列にオープン(∞Ω)があると Req→∞(電流0)。並列にショート(0Ω)があると Req→0 になります。
- 等しい抵抗の簡略式:直列 n 本は nR、並列 n 本は R/n です。
- 2抵抗の並列ショートカット: Req=\dfrac{R_1 R_2}{R_1+R_2} を覚えておくと計算が速いです。
- 単位と桁:kΩ・MΩ、mA などの接頭語に注意しましょう。換算ミスが最頻の誤答です。
電池の仕組み
電池は、酸化還元反応の化学エネルギーを電気エネルギーに変換する装置です。 金属などの電極を電解液に浸し、外部を導線でつなぐと電流が流れます。
負極(アノード)では酸化が起こり、電子を放出します(電子は外部回路へ流れ出ます)。 正極(カソード)では還元が起こり、外部から来た電子を受け取ります。 ※電池(ガルバニ電池)では「負=アノード」「正=カソード」です。電気分解では極性が逆なので区別して覚えましょう。
溶液中では電荷のつり合いを保つためにイオンが移動します(電解液・塩橋・セパレータの役割)。 電子の流れは負極→正極、電流の向き(約束)は正極→負極です。
代表例(ダニエル電池の型)
負極:Zn → Zn2+ + 2e−(酸化)
正極:Cu2+ + 2e− → Cu(還元)
起電力 E は両極の電位差で決まり、濃度が変わると反応の進みやすさが変わります(実務では温度・濃度条件をそろえて測定します)。
確認ポイント
- 語の対応:電池(発電)では「負=アノード(酸化)」「正=カソード(還元)」です。
- 流れの向き:電子は 負極→正極、電流の約束の向きは 正極→負極 です。
- イオンの役割:外部は電子、内部はイオンが回路を完成させます(塩橋・セパレータ)。
- 起電力と端子電圧:端子電圧は
V = E − I r(r:内部抵抗)で下がります。電流が大きいほど電圧降下が大きくなります。 - シリーズ/パラレル:直列で電圧が加算、並列で電流供給力が増加(内部抵抗は並列で低下)します。
- 覚え方:「酸化は負極・還元は正極」(サンカはマイ、ゲンはプラ)で混乱を防ぎます。
- 安全面:漏液やガス発生は腐食性・可燃性の危険があります。作業時は換気と保護具を使用します。
起電力の大きさ
起電力(E)は、電池の2電極間に生じる理想的な電位差(外部に電流を流さないときの電圧)です。
起電力はおおまかに両電極のイオン化傾向(標準電極電位)の差で決まります。差が大きいほど E は大きくなります。
確認ポイント
- 極性: 正極=還元、負極=酸化。外部回路の電子の流れは負極 → 正極です。
- 無負荷 vs 実測: 起電力 E は“無負荷電圧”。実際に電流が流れると端子電圧は V = E − I r でEより小さくなります(内部抵抗による電圧降下)。
- 直列・並列: 直列ではE も r も加算、並列ではEは同じで r が低下して電流供給力が上がります。
- 極性の見分け: 金属のイオン化傾向が大きい方が負極(溶けやすい)です。
- 代表値の目安: ダニエル電池は起電力およそ1.10 Vです(用語確認レベル)。
ひっかけ注意
- 端子電圧=起電力と決めつけない。負荷をつないだ瞬間、 V = E − I r でコツンと下がる。
- 濃度が高いほど必ず E が大きいとは限らない。まずは極の組合せ(イオン化傾向の差)で考える。 迷ったら「負極=イオン化傾向が大きい金属」で整理。
- 電子の流れと電流の向き(約束)は逆。 外部回路は「電子:負極 → 正極」「電流:正極 → 負極」。
- 直列・並列の取り違えに注意。直列はE も r も足し算。並列はE は同じで r が小さくなり、電流を出しやすい。
主な電池の起電力と素材
一次電池
| 電池の種類 | 起電力 | 正極 | 負極 | 電解液/電解質 |
|---|---|---|---|---|
| マンガン乾電池 | 1.5V | 二酸化マンガン | 亜鉛 | 塩化亜鉛/塩化アンモニウム |
| アルカリ マンガン乾電池 |
約1.5V | 二酸化マンガン | 亜鉛 | 水酸化カリウム |
| リチウム電池 | 約3.0V | 二酸化マンガン 硫化鉄など |
リチウム | 非水系 有機電解液 |
| 酸化銀電池 | 約1.55V | 酸化銀 | 亜鉛 | 水酸化カリウム 水酸化ナトリウム |
| 空気亜鉛電池 | 約1.3V | 酸素 | 亜鉛 | 水酸化ナトリウム |
※一次電池:放電のみの使い切り
二次電池
| 電池の種類 | 起電力 | 正極 | 負極 | 電解液/電解質 |
|---|---|---|---|---|
| 鉛蓄電池 | 約2.0V | 二酸化鉛 | 鉛 | 希硫酸 |
| ニッケル カドミウム電池 |
約1.3V | ニッケル酸化物 | カドミウム | 水酸化カリウム |
| ニッケル 水素電池 |
約1.35V | ニッケル酸化物 | 水素吸蔵 合金 |
水酸化カリウム |
| リチウム イオン電池 |
約4.0V | リチウム複合 酸化物 |
炭素 | 非水系 有機電解液 |
| ナトリウム 硫黄電池 |
約2.1V | 硫黄 | ナトリウム | β・アルミナ |
※二次電池:外部電池からの充電で繰り返し使用。
ひっかけ注意
- アルカリ=水酸化カリウム、マンガン乾電池=塩化アンモニウム/塩化亜鉛。 入れ替えひっかけ注意。
- 酸化銀電池=約1.55V、空気亜鉛=約1.3V (1.5Vと混同させる出題アリ)。
- 二次電池:鉛=希硫酸、NiMH=KOH、Li-ion=非水系。 電解液セットで覚える。
クイズ
次は第2章10節:静電気に進みましょう。