熱の発生機構

自然発火とは、点火源が存在しない状態や、可燃物に外部から加熱が加えられていない状態でも、物質が20℃の空気中で自然に発熱し、その熱が長時間にわたって蓄積されることで、やがて発火点に達して燃焼が始まる現象をいいます。

熱が発生する仕組みには、酸化による発熱、化学分解による発熱、発酵による発熱、さらには吸着による発熱などがあります。それぞれの発熱の仕組みに応じて、代表的な発熱性物質を整理すると、以下のようになります。

発熱する物質

発熱する物質
発熱の機構 発熱する物質
酸化
  • 乾燥油(アマニ油、キリ油等)
  • 原綿
  • 石炭
  • ゴム粉
  • 鉄粉など
※ カリウム、ナトリウムなどの第3類危険物は、リチウムを除き、ほとんどが自然発火性を有するため、空気中にあると酸化して自然発火する。アルキルアルミニウムは、-50°C以下でも空気と酸化反応を起こして自然発火する。
分解
  • セルロイド
  • ニトロセルロース(第5類危険物)など。
発酵
  • 堆肥
  • ゴミ
  • ほし草
  • ほしわらなど
吸着
  • 活性炭
  • 木炭粉末(脱臭剤など)
その他 エチレンがポリエチレンに重合する際の重合反応熱など

乾性油

動植物油類(第4類危険物)は空気中で酸化され、その酸化熱が蓄積することで自然発火を起こします。特に乾きやすいものほど酸化が進みやすく、乾性油は徐々に酸化して固まる性質を持ちます。

乾性油は分子内に多数の不飽和結合(C=C結合)を含み、この二重結合部に酸素が入り込むことで酸化が起こり熱が発生します。また、油脂100gが吸収するヨウ素の量(ヨウ素価)で不飽和度を示し、値が大きいほど二重結合が多いことを表します。ヨウ素価100以下を不乾性油、100~130を半乾性油、130以上を乾性油と分類します。乾性油は水(比重1)より軽く、約0.9の比重をもち、非水溶性かつ不飽和脂肪酸を含みます。

可燃性粉体のたい積物

粉体とは、微細な固体粒子が集合したものを指します。可燃性粉体には、セルロース、コルク、粉ミルク、砂糖、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、活性炭、木炭、アルミニウム、マグネシウム、鉄などがあります。

これらの粉体が堆積すると、空気中の湿度が高く、粉体の含水率が大きいものほど発熱・蓄熱が進行しやすくなり、自然発火に至る可能性が高まります。また、以下のような条件下でも発熱と蓄熱が促進され、自然発火の要因となります。

自然発火の要因
事由
① 空気中の湿度が高く、気温が高いとき
② 気温が高く、たい積物内の温度が高いとき
③ 物質の表面積が広く、酸素との接触面積が大きいとき
④ 物質の熱伝導率が小さく、保温効果が高いとき

演習問題へ進む前に、インタラクティブクイズでウォーミングアップしましょう。
回答は一度のみ有効です。もし間違えた場合は、表示される解説をしっかり読み、理解を深めてから次の問題に進んでください。

クイズ①

次のうち、分解による発熱に該当するものはどれですか?

クイズ②

次のうち、吸着による発熱に該当するものはどれですか?

次は「粉じん爆発」に進みます。

粉じん爆発