静電気の発生

静電気とは、電荷が流れずに物体の表面や内部にとどまっている状態の電気をいいます。 物体の電気的な極性が正または負に片寄った状態を帯電と呼びます。

2つの物質が接触・摩擦・剥離すると、その境界で電荷(主に電子)のやり取りが起こります。 電子を受け取った側は負に帯電し、電子を失った側は正に帯電します。 この電荷の偏りが静電気の正体です。なお、状況によっては帯電粒子(イオンや微粒子)の移動でも帯電が生じます。

物体どうしで電荷が移動しても、相互作用の前後で系全体の電気量(電荷の総和)は変化しません。 これを電気量(電荷)保存の法則といいます。

ひっかけ注意

  • 「正に帯電」=“プラスの電気をもらった”ではない。電子を失って相対的に正が多くなった状態だよ。

帯電とは電荷の偏りです。電子の移動が起きても、相互作用の前後で 系全体の電気量(正−負の総和)は変化しません。これを 電気量(電荷)保存の法則といいます。

2つの領域AとBで正電荷と負電荷の個数がそれぞれ8で釣り合い、A+B全体の電気量が0になることを示す図
電気量の保存 — AとBを合わせた系では、 正の電荷 8負の電荷 8 が等しく、 合計は0のままです(電子が片方へ移っても全体は変わりません)。
図の見方: AとBの境界で電子が移動しても、A+B全体で数えると 正=負が維持されます。“部分で増えても、全体は不変”がポイント。

ひっかけ注意

  • 「正に帯電」=電子を失った状態。プラスの電気をもらったではありません。
二つの領域AとBが接触・剥離して電子がA側へ移動し、Aは負に、Bは正に帯電する様子。Aは+4より-6が多く、Bは+4が-2より多い。中央のギャップでは電位差により放電が起こりうる。
帯電 — 接触・剥離で電子がAへ移動すると、 Aは負に帯電(+4 < −6)、Bは正に帯電(+4 > −2)となります。 全体の電気量は保存され、境界の電位差が大きいと火花放電の原因になります。
図の見方: 帯電は「正と負の」で判定するよ。Aは負が多い=負に帯電、Bは正が多い=正に帯電。

ひっかけ注意

  • 「正に帯電」=電子を失った状態。プラスの電気を“もらう”わけではない。
  • 帯電は相手との組合せで変わる相対概念(帯電列の順を固定の“絶対順位”と誤解しない)。

確認ポイント

  • 電荷には正と負があり、電子は負電荷、陽子は正電荷をもつ。
  • 同極は反発、異極は引力で作用する。これを静電力(クーロン力)という。
  • 物体や原などがもつ電気的性質を電荷、その量を電気量という。
  • 電気量の単位はクーロン(C)。参考:素電荷 e ≈ 1.60×10−19 C
  • 静電気は絶縁性が高く乾燥した環境ほど逃げ道が少なく、蓄積しやすい
  • 固体・液体・気体のいずれも帯電する(液体・気体は漏えいしやすく残りにくい)。
  • 代表的な測定:箔検電器表面電位計(電界計)ファラデーケージ(筒)+クーロンメータ、エレクトロメータ等。

電気素量

電気素量(elementary charge)とは、電荷の最小単位です。 電子がもつ電荷は −e、陽子は +e で、
その大きさは等しく e ≈ 1.602×10−19 C です。

すべての電気量 Q は、この最小単位の整数倍で表されます: Q = n·en は整数)。

ひっかけ注意

  • 10−191019 と書き間違えない(桁が大違い)。
  • 電子は−e、陽子は+e。大きさは同じで符号だけが逆

箔検電器

帯電の有無を調べる代表的な器具です。金属の集電板と導体棒の先に、軽い 金属箔(2枚)が吊られています(容器はガラスなどの絶縁体)。

  • ① 静電誘導: 帯電体を集電板に近づけると、導体内で電荷が移動し、 箔には同符号の電荷が集まります。
  • ② 反発で開く: 同符号どうしが斥力で反発し、2枚の箔が左右に開きます。
  • ③ 接触でより大きく: 帯電体を直接触れると電荷が移り、開きがさらに大きくなります。

開きの有無や大きさで帯電の有無・強さを確認します(極性の判定は基準電荷と比較して行います)。

箔検電器の概念図:上部に集電板、下部に2枚の金属箔。帯電体を近づけると箔が左右に開く。
箔検電器の動き — 帯電体を近づけると静電誘導で箔に同符号の電荷が集まり、 斥力で箔が開く

ひっかけ注意

  • 箔が開く原因は同符号どうしの反発(斥力)。「異符号で引き合う」が混ざりやすい。
  • 「近づける(誘導)」でも開く。接触だけで開くと覚えない。
  • 容器は絶縁体で支持(漏えいすると開きが小さくなる)。
乾燥環境ではよく開き、湿潤環境では開きにくくなります。測定時は手で接地(アース)しないよう注意。

帯電列

箔検電気は金属板に帯電体を近づけると、静電誘導によって金属板に反対の電荷が現れ、 その先の2枚の箔に帯電体と同じ電荷が帯電する。

この結果、同じ電荷どうしが反発することで、2枚の箔が開く。

導電率 σ(シグマ)

導電率(電気伝導率)は、物質の電気の流れやすさを表す量です。 値が大きいほど電気を通しやすく、抵抗は小さくなります。

導電率は抵抗率(流れにくさ)ρの逆数で、 σ = 1 / ρ。単位は S/m(ジーメンス毎メートル)

形状に依存する実際の通しやすさ(コンダクタンス)は G = σ·A/L(A:断面積、L:長さ)。抵抗は R = ρ·L/A。 つまり 「材質(σ)×形状」で決まります。

液体(電解質)では塩分や酸の濃さの指標として用います。 例:食塩水は濃いほど σ↑(※通常は 25℃ への温度換算で管理)。

導電率の関係式 σ = 1 / ρ を示す図
導電率の式:σ = 1 / ρ

確認ポイント

  • 定義:導電率は通しやすさ、抵抗率は通しにくさσ = 1/ρ
  • 形状との関係:R = ρ·L/A、G = σ·A/L。材質と形状をセットで考える。
  • 大小関係の直感:σ↑ ⇒ R↓(通電良好)。金属 > 電解質溶液 > 純水・絶縁体
  • 温度依存:金属はT↑でσ↓(散乱↑)、電解質溶液はT↑でσ↑(移動度↑)。
  • 単位の実務表記:測定器は mS/cm を多用。1 mS/cm = 0.1 S/m1000 μS/cm = 0.1 S/m)。
  • 測定のコツ:塩分換算は“温度補正(25℃換算)+ 検量線”。条件が違うと数値はずれる。

オームの法則

オームの法則は、抵抗を流れる電流 I がその両端の電圧 V に比例し、 抵抗 R に反比例する関係を表します。式は V = I・R です。

ここでの単位は、V:ボルト [V]、I:アンペア [A]、 R:オーム [Ω] を用います。直流(DC)または低周波で、温度がほぼ一定の 「オーム性(線形)抵抗」に適用します。

電流の式
電流の式:I=V / R
抵抗の式
抵抗の式:R=V / I
電圧の式
電圧の式:V = I R
指で隠すとよくわかるオームの法則
三角図の使い方:隠した記号=残りの二つの関係(例:Vを隠すと V=I・R)。

確認ポイント

  • 適用範囲:オーム性(線形)抵抗に適用します。温度が上がると抵抗値が変わる場合があり、厳密には V–I が直線でない素子(電球・半導体・整流器など)にはそのまま当てはめません。
  • 単位整合:V [V]、I [A]、R [Ω]。ミリ・キロなどの接頭語に注意しましょう(例:mA=10−3A)。
  • 電力の関係:P = V・I = I2R = V2/R。計算の近道として使います。
  • 直列・並列の前提:直列は電流一定・電圧分担、並列は電圧一定・電流分担。合成後に V=I・R を当てます。
  • 温度依存:金属抵抗は温度上昇で R が増える傾向があります(電球が冷間時に低抵抗なのはこのためです)。
  • 測定のコツ:テスターの内部抵抗やリード線抵抗が結果に影響します。精密計算では配線抵抗もモデル化します。

直列と並列の合成抵抗

抵抗のつなぎ方には直列並列があります。直列は同じ電流が順番に流れます。 並列は同じ電圧が各枝にかかります。合成(等価)抵抗は次の式で求めます。

直列の定義

  • 各抵抗に流れる電流は同じです(電流一定)。
  • 電圧は抵抗値に比例して分担します(電圧分割)。
  • 合成抵抗は足し算です: Req = R1 + R2 + R3 + …
直列回路:R1→R2→R3を一列に接続した図。合成抵抗は足し算。
直列の合成抵抗:Req=R1+R2+R3

並列の定義

  • 各抵抗にかかる電圧は同じです(電圧一定)。
  • 電流は抵抗値に反比例して分流します(電流分割)。
  • 合成抵抗は逆数の和です: 1/Req = 1/R1 + 1/R2 + 1/R3 + …
並列回路:共通の上下母線にR1・R2・R3が縦に接続された図。合成抵抗は逆数和。
並列の合成抵抗:1/Req=1/R1+1/R2+1/R3

確認ポイント

  • 直列:電流はどこでも同じ、電圧は分かれて足し算になります。
  • 並列:電圧はどこでも同じ、電流は枝ごとに分かれて合流します。
  • 見分け:直列は「一本道」、並列は「同じ始点・終点に枝が並ぶ」。
  • 直列の電圧分割:Vk = V·Rk / Req です。合計は元の電圧になります。
  • 並列の電流分割:Ik = I·(R/(Rk+R))(2枝のとき)。抵抗が小さい枝ほど電流が多く流れます。
  • ショート/オープンの極端値:直列にオープン(∞Ω)があると Req→∞(電流0)。並列にショート(0Ω)があると Req→0 になります。
  • 等しい抵抗の簡略式:直列 n 本は nR、並列 n 本は R/n です。
  • 2抵抗の並列ショートカット: Req=\dfrac{R_1 R_2}{R_1+R_2} を覚えておくと計算が速いです。
  • 単位と桁:kΩ・MΩ、mA などの接頭語に注意しましょう。換算ミスが最頻の誤答です。

電池の仕組み

電池は、酸化還元反応の化学エネルギーを電気エネルギーに変換する装置です。 金属などの電極を電解液に浸し、外部を導線でつなぐと電流が流れます。

負極(アノード)では酸化が起こり、電子を放出します(電子は外部回路へ流れ出ます)。 正極(カソード)では還元が起こり、外部から来た電子を受け取ります。 ※電池(ガルバニ電池)では「負=アノード」「正=カソード」です。電気分解では極性が逆なので区別して覚えましょう。

溶液中では電荷のつり合いを保つためにイオンが移動します(電解液・塩橋・セパレータの役割)。 電子の流れは負極→正極、電流の向き(約束)は正極→負極です。

代表例(ダニエル電池の型)

負極:Zn → Zn2+ + 2e(酸化)
正極:Cu2+ + 2e → Cu(還元)

起電力 E は両極の電位差で決まり、濃度が変わると反応の進みやすさが変わります(実務では温度・濃度条件をそろえて測定します)。

確認ポイント

  • 語の対応:電池(発電)では「負=アノード(酸化)」「正=カソード(還元)」です。
  • 流れの向き:電子は 負極→正極、電流の約束の向きは 正極→負極 です。
  • イオンの役割:外部は電子、内部はイオンが回路を完成させます(塩橋・セパレータ)。
  • 起電力と端子電圧:端子電圧は V = E − I r(r:内部抵抗)で下がります。電流が大きいほど電圧降下が大きくなります。
  • シリーズ/パラレル:直列で電圧が加算、並列で電流供給力が増加(内部抵抗は並列で低下)します。
  • 覚え方:「酸化は負極・還元は正極」サンカはマイ、ゲンはプラ)で混乱を防ぎます。
  • 安全面:漏液やガス発生は腐食性・可燃性の危険があります。作業時は換気と保護具を使用します。

起電力の大きさ

起電力(E)は、電池の2電極間に生じる理想的な電位差(外部に電流を流さないときの電圧)です。

起電力はおおまかに両電極のイオン化傾向(標準電極電位)の差で決まります。差が大きいほど E は大きくなります。

確認ポイント

  • 極性: 正極=還元、負極=酸化。外部回路の電子の流れは負極 → 正極です。
  • 無負荷 vs 実測: 起電力 E は“無負荷電圧”。実際に電流が流れると端子電圧は V = E − I rEより小さくなります(内部抵抗による電圧降下)。
  • 直列・並列: 直列ではE も r も加算、並列ではEは同じで r が低下して電流供給力が上がります。
  • 極性の見分け: 金属のイオン化傾向が大きい方が負極(溶けやすい)です。
  • 代表値の目安: ダニエル電池は起電力およそ1.10 Vです(用語確認レベル)。

ひっかけ注意

  • 端子電圧=起電力と決めつけない。負荷をつないだ瞬間、 V = E − I rコツンと下がる
  • 濃度が高いほど必ず E が大きいとは限らない。まずは極の組合せ(イオン化傾向の差)で考える。 迷ったら「負極=イオン化傾向が大きい金属」で整理。
  • 電子の流れ電流の向き(約束)は逆。 外部回路は「電子:負極 → 正極」「電流:正極 → 負極」。
  • 直列・並列の取り違えに注意。直列はE も r も足し算。並列はE は同じで r が小さくなり、電流を出しやすい。

主な電池の起電力と素材

一次電池

一次電池の起電力と素材
電池の種類 起電力 正極 負極 電解液/電解質
マンガン乾電池 1.5V 二酸化マンガン 亜鉛 塩化亜鉛/塩化アンモニウム
アルカリ
マンガン乾電池
約1.5V 二酸化マンガン 亜鉛 水酸化カリウム
リチウム電池 約3.0V 二酸化マンガン
硫化鉄など
リチウム 非水系
有機電解液
酸化銀電池 約1.55V 酸化銀 亜鉛 水酸化カリウム
水酸化ナトリウム
空気亜鉛電池 約1.3V 酸素 亜鉛 水酸化ナトリウム

※一次電池:放電のみの使い切り

二次電池

二次電池
電池の種類 起電力 正極 負極 電解液/電解質
鉛蓄電池 約2.0V 二酸化鉛 希硫酸
ニッケル
カドミウム電池
約1.3V ニッケル酸化物 カドミウム 水酸化カリウム
ニッケル
水素電池
約1.35V ニッケル酸化物 水素吸蔵
合金
水酸化カリウム
リチウム
イオン電池
約4.0V リチウム複合
酸化物
炭素 非水系
有機電解液
ナトリウム
硫黄電池
約2.1V 硫黄 ナトリウム β・アルミナ

※二次電池:外部電池からの充電で繰り返し使用。

ひっかけ注意

  • アルカリ=水酸化カリウム、マンガン乾電池=塩化アンモニウム/塩化亜鉛。 入れ替えひっかけ注意。
  • 酸化銀電池=約1.55V、空気亜鉛=約1.3V (1.5Vと混同させる出題アリ)。
  • 二次電池:鉛=希硫酸、NiMH=KOH、Li-ion=非水系。 電解液セットで覚える。

クイズ

オームの法則に該当しないのは次のうちどれか。

次は第2章10節:静電気に進みましょう。

静電気