メタノール(CH3OH)
性質 | 代表値 |
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比重(20℃/4℃) | 約 0.79 |
沸点 | 約 64.7℃ |
凝固点 | 約 -97.6℃ |
引火点 | 約 11℃ |
発火点 | 約 464℃ |
燃焼範囲 | 約 6〜36vol% |
蒸気比重 | 約 1.11 |
水との関係 | 完全混和 |
※メタ:液軽0.79・気重1.1/引11・沸64/燃6–36/水“親友”(完全混和)
メタノールの性質と注意点 |
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① 毒性が強く、誤飲すると失明や死亡に至るおそれがあります。 |
② メタノールはアルコール類の中で最も単純な分子構造をもち、分子量も最小です。(12 + 1 × 4 + 16 = 32) |
③ 歴史的には木酢液の蒸留で得られ、現在は主に天然ガス(メタン)や石炭由来の合成ガスから製造されます。 |
④ メタノールを酸化するとホルムアルデヒドになり、さらに酸化するとギ酸になる。 |
⑤ 水と完全混和で拡散しやすい。漏えい時は堰き止め、排水系への流入を防止する。 |
⑥ 燃焼時の火炎は青白く見えにくい。消火・接近時は火炎の可視性に注意する。 |
⑦ 可燃蒸気対策:換気・着火源管理・静電気対策(接地・ボンディング)を徹底する。 |
⑧ 保管は密栓・冷暗所・直射日光回避。通気口付き容器は使用しない。 |
⑨ 消火はアルコール耐性泡(AR-AFFF)・粉末・CO₂・水霧が有効。直噴水は飛散拡大のおそれ。 |
⑩ 不適合物:強酸化剤(硝酸・過酸化物など)と混合しない。 |
⑪ 応急処置:飲み込んだ場合は吐かせず、直ちに医療機関へ。眼・皮膚は速やかに洗浄、吸入は新鮮空気・安静。 |
⑫ 参考:燃焼範囲 6〜36 vol%、引火点 約+11℃、蒸気比重 約1.11(空気>1で低所滞留)。 |
エタノール (C2H5OH)
性質 | 代表値 |
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比重(20℃/4℃) | 約 0.79 |
沸点 | 約 78.3 ℃ |
凝固点 | 約 −114 ℃ |
引火点(CC) | 約 +13 ℃ |
発火点 | 約 363 ℃ |
燃焼範囲 | 約 3.3 〜 19 vol% |
蒸気比重(空気=1) | 約 1.59 |
エタノールの性質と注意点 |
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① 毒性は比較的弱いが、麻酔作用・中枢神経抑制がある。大量摂取で意識障害・呼吸抑制のおそれ。 |
② エタノールを酸化するとアセトアルデヒド、さらに酸化で酢酸となる(酸化の段階反応)。 |
③ 第4類・第1石油類(水溶性)。無色透明・特有の臭気で、水と完全混和。 |
④ 物性の要点:比重 約0.79、引火点 約+13℃(CC)、沸点 約78℃、蒸気比重 約1.59(空気>1)。 |
⑤ 可燃蒸気は低所に滞留しやすく、遠隔着火の危険がある(換気で濃度管理)。 |
⑥ 燃焼範囲 3.3〜19 vol%。濃度がこの範囲に入ると着火しやすい。 |
⑦ 炎は青色で見えにくい場合がある。初期消火・接近時は可視性に注意。 |
⑧ 保管:密栓・冷暗所・直射日光回避。防爆換気を確保し、通気口付き容器は使用しない。 |
⑨ 取り扱い:火気厳禁・静電気対策(接地/ボンディング)・非火花性工具の使用。 |
⑩ 消火:アルコール耐性泡(AR-AFFF)・粉末・CO₂・水霧が有効。水の直噴は飛散拡大の恐れ。 |
⑪ 不適合物:強酸化剤(硝酸・過塩素酸・過酸化物など)との混合は発熱・反応暴走の危険。 |
⑫ 漏えい:火気遮断・換気。堰き止めて排水系流入を防止(完全混和で拡散しやすい)。不燃性吸収材で回収。 |
エタノールの製法と用途
区分 | 原料 / 製法 | 主な用途 |
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合成アルコール(工業用・飲食不可)
(工業用・飲食不可) |
石油由来のエチレンを原料に化学合成(例:エチレンの水和反応) | 化学用品(化粧品・洗剤・塗料・医薬品原料・溶剤 など)、工業用エタノール |
発酵アルコール(食品・飲用可)
(食品・飲用可) |
サトウキビ・トウモロコシ等の農作物を発酵→蒸留・精製 | 食品用(防腐・香料・抽出・試薬 など)、工業用エタノール、飲用(酒類) |
変性アルコール(非飲用) | エタノールに変性剤(メタノール/イソプロパノール/ベンゼン等)を混合 | 溶剤・洗浄・清掃・(規格により)消毒用途 など |
メタノールとエタノールに共通する性状
共通する性状(試験ポイント) |
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① 無色透明で特有の芳香がある。 |
② 水や多くの有機溶媒とよく溶け合う(水と完全混和)。 |
③ 水で希釈すると引火点は高くなる(濃度が下がるほど可燃性は弱まる)。 |
④ 揮発性が強い(常温で可燃蒸気を生じやすい)。 |
⑤ 1つのヒドロキシ基(−OH)をもつ飽和1価アルコール。 |
⑥ 酸化性物質と混合・接触禁止:第1類 三酸化クロム(CrO3)、第6類 硝酸(HNO3)・過酸化水素(H2O2)等と反応し、発熱・発火/爆発のおそれ(危険な過酸化物などの生成)。 |
⑦ 青白い炎で燃えるため、明るい場所では炎が見えにくいことがある。 |
⑧ ナトリウム(Na)と反応し、アルコラート生成+水素発生(H2↑):2ROH + 2Na → 2RONa + H2。 |
1-プロパノール(n-プロピルアルコール)(C3H7OH)
性質 | 代表値 |
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比重(20℃) | 0.8(実測値:0.803) |
沸点 | 97.2℃ |
引火点 | 15℃ |
発火点 | 412℃ |
燃焼範囲 | 2.1 ~ 13.7 vol% |
蒸気比重(空気=1) | 2.1 |
プロパノール(n-プロピルアルコール)の性質と注意点 |
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① 無色透明の液体。アルコール臭をもつ。 |
② 水、エタノール、ジエチルエーテルによく溶ける。 |
③ 引火点は約15℃と低く、常温で引火の危険性が高い。 |
④ 蒸気比重は約2.1(空気=1)で、低所に滞留しやすい。火源に引火・爆発の危険。 |
⑤ 燃焼範囲は約2.1~13.7 vol%と広く、可燃性蒸気に注意。 |
⑥ 吸入すると中枢神経系に影響し、めまい・頭痛を起こすことがある。 |
⑦ 皮膚・粘膜に対して刺激性をもつ。保護具の着用が必要。 |
⑧ 貯蔵は冷暗所・密栓し、火気・熱源を避ける。 |
2-プロパノール(イソプロピルアルコール)((CH3)2CHOH)
性質 | 代表値 |
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比重(20℃) | 0.785 |
沸点 | 約 82℃ |
凝固点 | -89℃ |
引火点 | 約 12℃ |
発火点 | 約 399℃ |
燃焼範囲 | 約 2.0~12.7 vol% |
蒸気比重(空気=1) | 約 2.1 |
プロパノール(イソプロピルアルコール)の性質と注意点 |
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① 無色透明の液体で、特有のアルコール臭をもつ。 |
② 水、エタノール、ジエチルエーテルによく溶ける。 |
③ 引火点は約12℃と低く、常温でも火災の危険性が高い。 |
④ 蒸気比重は約2.1(空気=1)で、低所に滞留しやすい。火源に達すると爆発的に燃焼し、燃焼時は青白い炎を出す。 |
⑤ 燃焼範囲は約2.0~12.7 vol%と広く、爆発の危険がある。 |
⑥ 蒸気や高濃度の曝露でめまい・頭痛・中枢神経抑制を起こす。 |
⑦ 皮膚・眼に刺激性を示すため、保護具(手袋・ゴーグル)の着用が必要。 |
⑧ 消毒用アルコールに広く使用されるが、飲用不可・誤飲注意(代謝で有害作用)。 |
⑨ 貯蔵は冷暗所で密栓し、火気・熱源を避ける。 |
⑩ 2-プロパノールを酸化させるとアセトンになる。 |
性質・注意点 | 1-プロパノール(n-プロパノール) | 2-プロパノール(イソプロパノール) |
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化学式 | C3H7OH(直鎖構造) | (CH3)2CHOH(分枝構造) |
比重(20℃) | 約 0.803 | 約 0.785 |
沸点 | 約 97℃ | 約 82℃ |
引火点 | 約 15℃ | 約 12℃ |
発火点 | 約 412℃ | 約 399℃ |
燃焼範囲 | 約 2.1~13.7 vol% | 約 2.0~12.7 vol% |
蒸気比重(空気=1) | 約 2.1 | 約 2.1 |
性状 | 無色透明の液体、アルコール臭 | 無色透明の液体、強いアルコール臭 |
特徴 | 水やエタノールによく溶ける。 工業溶剤に用いられる。 |
「消毒用アルコール」の主成分。 飲用不可・誤飲注意。 |
危険性 | 蒸気は低所に滞留し爆発危険。 中枢神経抑制作用。 |
蒸気は低所に滞留し爆発危険。 刺激性が強く、中枢神経抑制作用。 |
貯蔵・取扱い | 冷暗所で密栓。火気厳禁。 | 冷暗所で密栓。火気厳禁。 |
クイズ
次は第3章9節:第2石油類の性状に進みます。