第2石油類
第2石油類とは、常圧(1気圧)において引火点が21℃以上70℃未満の液体をいいます。 家庭で身近な灯油・軽油・キシレンなどの非水溶性に加え、濃酢酸のような水溶性の液体も含まれます。
第1石油類より引火点は高いが、加熱されると可燃性蒸気を発生して火災・爆発の危険があるため、温度管理と換気が重要です。
ひっかけ注意!
第2石油類は引火点が「21℃以上70℃未満」です。
21℃ちょうどは第2石油類、70℃ちょうどは第3石油類になるところを整理しておきましょう。
灯油
無色~淡黄色(経年で黄褐色になることあり)。特有の臭気を有します。
灯油の物理的性質
| 性質 | 代表値 |
|---|---|
| 比重 | 約0.8 |
| 沸点 | 145℃〜270℃ |
| 引火点 | 40℃以上 |
| 発火点 | 約220℃ |
| 燃焼範囲 | 1.1 ~ 6.0 vol% |
| 蒸気比重(空気=1) | 4.5(空気より重い) |
※ 製品・測定条件で前後します。本表は試験対策上の代表値です。
試験TIP
第2石油類(灯油など)は引火点21~70℃未満。 蒸気は空気より重く低所滞留、水に不溶で浮くため泡・粉末系の消火剤が有効です。
灯油の性質と取り扱い上の注意
- 灯油にガソリンを混合してはいけません。引火点が大きく低下し、 極めて引火しやすくなります。
- 灯油を霧状(ミスト)や薄い膜にすると、 空気との接触面積が増え着火しやすくなります(噴霧・雑巾への広がりに注意)。
- 灯油は電気不導体で、移送・小分け時の流動で静電気が発生しやすい。 容器間のアース・ボンディングで放電対策を行うこと。
- 灯油は水に不溶・水より軽いため水面に浮く。 放水消火は拡散の危険があるので禁物(冷却のための霧状水は可)。
- 有効な消火剤は泡(フォーム)・粉末・二酸化炭素。 表面を覆って窒息・遮断することが要点。
- 灯油の蒸気は空気より重いため、低所に滞留しやすい。 床面近くの換気・ドレン・ピット周りの着火源管理が重要。
- 保管は密栓・冷暗所・換気良好・火気厳禁で行う。 加熱器具への給油は完全消火・十分冷却後に実施する。
- 専用・導電性の容器を用い、注入口に金属接触させて静電気を逃がす。 こぼれは直ちに拭き取り、廃布は密閉容器へ。
- 誤給油防止(ガソリンとの取り違え)に注意。 表示の明確化・専用ポリ缶使用・小分け時のラベル徹底。
軽油
精製直後は無色であるが、出荷前に精製会社により淡黄〜淡褐色や薄緑色に着色されていることがあります。
また、石油臭があります。
軽油の物理的性質
| 性質 | 代表値 |
|---|---|
| 比重(20℃) | 約0.85 |
| 沸点 | 170℃〜370℃ |
| 引火点 | 45℃以上 |
| 発火点 | 約220℃ |
| 燃焼範囲 | 1.0〜6.0vol% |
| 蒸気比重 | 約4.5(空気より重い) |
※ 製品や測定条件で前後します。試験対策上の代表値を記載しています。
軽油の性質と取り扱い上の注意
- 軽油に第1類(酸化性固体)を接触させたり、 第6類(酸化性液体)を混入してはいけません。 強い酸化作用で発熱・発火のおそれ。
- 軽油は電気不導体で、移送・小分け時に静電気が発生しやすい。 容器間のアース/ボンディングで放電対策を行う。
- 霧状(ミスト)や薄膜になると空気との接触面積が増え 着火しやすくなる(噴霧・ウエス広がりに注意)。
- 水に不溶・水より軽いため水面に浮く。 放水直噴は拡散の危険(冷却は霧状水、消火は泡・粉末・CO₂が有効)。
- 蒸気は空気より重いため低所滞留。 床面近くの換気、ピット・側溝周りの着火源管理を徹底。
- 保管は密栓・冷暗所・換気良好・火気厳禁。 給油はエンジン停止・完全消火・十分冷却後に行う。
- 専用(導電性)容器を使用し、注入口で金属接触させて静電気を逃がす。 こぼれは直ちに拭き取り、汚染物は密閉容器で保管・処理。
- 誤給油防止(灯油・ガソリンとの取り違え)を徹底。 明確な表示・色分け容器・小分け時のラベリングを行う。
- 漏えい時は下流・低所への広がりを防ぐため防油堤・吸着材で囲い、 側溝・排水路への流入を防止(環境汚染対策)。
出る出るポイント!灯油と軽油のちがい
灯油と軽油はいずれも第2石油類で、水に不溶・蒸気は空気より重い性質をもちます。
灯油は家庭用燃料(ストーブ・ボイラーなど)として使われるのに対し、軽油はディーゼルエンジン用燃料として使われる点を整理しておきましょう。
キシレン(C6H4(CH3)2)
無色の液体で、芳香族炭化水素特有の甘い臭いをもち、オルト(o)・メタ(m)・パラ(p)の3種の異性体があります。
キシレンの物理的性質
| 性質 | 代表値 |
|---|---|
| 比重(20℃) | 約0.86~0.88 |
| 沸点 | 約138~144℃(異性体により差) |
| 引火点 | 約30℃(第2石油類) |
| 発火点 | 約460~465℃ |
| 燃焼範囲 | 約1.0~7.0 vol% |
| 蒸気比重(空気=1) | 約3.7(空気より重い) |
キシレンの性質と取り扱い上の注意
- 3種の異性体(オルト・メタ・パラ)がある。 (物性は概ね類似、沸点にわずかな差)。
- 水に不溶で水より軽く水面に浮く。 一方、有機溶媒(エタノール・エーテル等)に可溶。
- 蒸気には有害性(頭痛・めまい等の中枢神経抑制)。 換気徹底、長時間作業では保護具の選定。
- 第2石油類で引火点≈30℃。 蒸気は空気より重く低所滞留→床面・ピット・側溝の着火源管理と換気が重要。 静電気対策(アース/ボンディング)を行う。
- 放水直噴は拡散の危険(浮いて流出)。 泡(フォーム)・粉末・CO₂が有効。容器冷却は霧状水で。
- 酸化剤との接触厳禁(濃硝酸・過マンガン酸塩等)。 火気厳禁、防爆型機器・静電気対策を施し、密栓・冷暗所・換気良好な場所に保管。
- 漏えい時は吸着材で囲い込み、排水路へ流入防止。 付着布は密閉容器で一時保管。取扱いは耐溶剤手袋・保護眼鏡を着用。
ひっかけ注意!
「キシレンは水に溶けやすい第1石油類である」→ ×
キシレンはいずれも第2石油類の非水溶性液体で、水より軽く水面に浮きます。
クロロベンゼン(C6H5Cl)
無色の液体で、特有の芳香族臭をもつ有機溶剤です。
クロロベンゼンの物理的性質
| 性質 | 代表値 |
|---|---|
| 比重(20℃) | 約1.10(水より重い) |
| 沸点 | 約132℃ |
| 引火点 | 約28℃(第2石油類) |
| 発火点 | 約464℃ |
| 燃焼範囲 | 約1.3 ~ 10 vol% |
| 蒸気比重(空気=1) | 約3.9(空気より重い) |
クロロベンゼンの性質と取り扱い上の注意
- 水に不溶。アルコール・エーテル等の有機溶媒に可溶。 液体の比重は1.1(約)で水より重いため、漏えい時は水中で下層にたまりやすい。
- 蒸気は空気より重い(蒸気比重≈3.9)ため低所滞留。 ピット・側溝・地下室では換気徹底と着火源管理が必須。
- 第2石油類(引火点≈28℃)で可燃。 液体は電気不導体のため、移送・小分け時は静電気対策(アース/ボンディング)を行う。
- 放水直噴は拡散の危険(下層流動で広がる)。 消火は泡(フォーム)・粉末・CO₂が有効。容器冷却は霧状水で行う。
- 酸化剤(第1類・第6類)との接触厳禁。 強い酸化で発熱・発火のおそれ。火気厳禁・防爆型機器の使用。
- 漏えい時は吸着材や防油堤で囲い、排水路・下水への流入防止。 水より重いため低部・下流へ移動しやすい点に留意。
- 健康影響:蒸気の吸入で頭痛・めまい(中枢神経抑制)、皮膚の脱脂。 取扱いは換気・耐溶剤手袋・保護眼鏡・必要に応じ有機ガス用防毒マスク。
- 保管:密栓・冷暗所・換気良好・火気厳禁。 耐溶剤容器を用い、明確な表示(ラベル)と誤混入防止を徹底。
- 燃焼時に有害ガス(HCl等)を生成しうる。 風上待避・呼吸保護・周囲への拡散抑制を意識して対応。
出る出るポイント!クロロベンゼンのまとめ
- クロロベンゼンは第2石油類(引火点は約28℃)に分類される可燃性液体です。
- 水には溶けにくく、比重は約1.1で水より重いため、流出すると水中で下層にたまりやすい性質があります。
- 蒸気比重は約3.9と空気より重く、低所に滞留しやすいため、ピット・側溝・地下室では換気と着火源の管理が重要です。
ブタノール(CH3(CH2)3OH)
無色の液体で、やや刺激性のある発酵臭をもつアルコールです。
ブタノールの物理的性質
| 性質 | 代表値 |
|---|---|
| 比重(20℃) | 約0.81 |
| 沸点 | 約117~118℃ |
| 凝固点(融点) | 約-89℃ |
| 引火点 | 約35℃(アルコール類) |
| 発火点 | 約343℃ |
| 燃焼範囲 | 約1.4~11.2 vol% |
| 蒸気比重(空気=1) | 約2.6(空気より重い) |
ブタノールの性質と取り扱い上の注意
- 4種の異性体(1-/2-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール)。 本節は1-ブタノール(n-ブチルアルコール)。
- 消防法:第4類 第2石油類(引火点≈35℃)。 アルコール類ではない(アルコール類は炭素数1~3)。
- 水にやや溶ける(部分溶解)/多くの有機溶媒に可溶。 漏えい時は吸着材で回収し、排水系への流入防止を徹底。
- 蒸気は空気より重く、低所滞留。 ピット・側溝・床面近くの換気と着火源管理を厳格に。
- 流動・小分け時に静電気が発生しうる。 金属接触(ボンディング)と容器のアースで放電対策。
- 消火:泡(フォーム)、粉末、CO₂が有効。 霧状水は冷却・希釈目的で使用(直噴は拡散の恐れ)。※泡の種類はSDSの推奨に従う。
- 酸化剤との接触厳禁。 加熱・燃焼時に有害性ガスを生じるおそれ→風上待避と適切な呼吸保護。
- 健康影響:蒸気・ミスト吸入で中枢神経症状(頭痛・めまい等)、皮膚の脱脂・刺激。 換気徹底、耐溶剤手袋・保護眼鏡等を着用。
- 保管:密栓・冷暗所・換気良好・火気厳禁。 明確な表示で誤混入・誤使用を防止。
ひっかけ注意!(ブタノール)
「ブタノールは消防法上アルコール類である」→ ×
ブタノールは第4類 第2石油類に分類され、炭素数4のため「アルコール類(炭素数1〜3)」には含まれません。
酢酸(CH3COOH)
酢酸は、常温で無色の液体で、刺激性のある酢様の臭いをもつ弱酸です。
酢酸の物理的性質
| 性質 | 代表値 |
|---|---|
| 比重(20℃) | 約1.05 |
| 沸点 | 約118℃ |
| 凝固点(融点) | 約16.6~16.7℃ |
| 引火点 | 約39~40℃ |
| 発火点 | 約430~485℃ |
| 燃焼範囲 | 約4.0~19.9 vol% |
| 蒸気比重(空気=1) | 約2.1(空気より重い) |
酢酸の性質と取り扱い上の注意
- アセトアルデヒドの酸化で得られる代表的な有機酸(工業的製法の一例)。
- 純度約99%のほぼ無水の酢酸は 16.6~16.7℃で固化し、 氷酢酸と呼ばれる(17℃付近で結晶化)。
- 強い腐食性を持つ水溶性の酸。 コンクリートを腐食し、多くの金属(Zn, Fe, Mg 等)を腐食して水素を発生する。 (アルミニウム(Al) は酸化皮膜で耐食性が比較的高い)。
- アルコールと反応して酢酸エステル(CH3COOR)を生成。 代表例:酢酸エチル(CH3COOC2H5)。
- 食酢は酢酸約4~6%の水溶液。 (本教材では化学品としての酢酸を扱う。飲用用途と混同しない)。
- 第2石油類(水溶性)で可燃。引火点≈39~40℃。 蒸気は空気より重く低所に滞留しやすい → ピット・側溝の換気/着火源管理が重要。
- 静電気対策:水系で導電性はあるが、移送・小分け時はアース/ボンディングを実施。 容器は腐食に強いステンレス・ガラス等を用いる。
- 消火:耐アルコール泡(AR 系)・粉末・CO₂が有効。 霧状水は冷却・希釈に使用(直噴は拡散の危険)。
- 不適合物:強酸化剤(発熱・暴走の危険)、強塩基(発熱反応)。 混合禁止・区分保管を徹底。
- 健康影響:蒸気/ミストの吸入で刺激・咳嗽、皮膚・眼に強い刺激/腐食。 取扱いは換気徹底、耐酸手袋・保護眼鏡/フェイスシールド・ 必要に応じ有機ガス用防毒マスクを使用。
出る出るポイント!酢酸のおさらい
- 酢酸は代表的な有機酸で、第2石油類(水溶性)に分類されます。
- 純度が高い酢酸(ほぼ無水酢酸)は16.6〜16.7℃で固化し、「氷酢酸」と呼ばれます。
- 引火点は約39〜40℃で可燃、蒸気は空気より重く(蒸気比重≒2.1)、低所に滞留しやすい性質があります。
- 水に溶けて強い腐食性を示し、多くの金属を腐食させます。
おまけのひっかけ注意!(酢酸)
「酢酸は水より軽いため、漏えいすると水面に浮く」→ ×
酢酸の比重は約1.05で水より重く、水中で下層にたまりやすい点に注意。
アクリル酸(CH2=CHCOOH)
無色の液体で、酢酸に類似した刺激性のにおいをもつ不飽和カルボン酸です。
アクリル酸の物理的性質
| 性質 | 代表値 |
|---|---|
| 比重 (20℃) |
約1.05 |
| 沸点 | 約141℃ |
| 融点 | 約13~14℃ |
| 引火点 | 約48~55℃ |
| 発火点 | 約395~438℃ |
| 燃焼範囲 | 約3.9~19.8 vol% |
| 蒸気比重 (空気=1) |
約2.5(空気より重い) |
アクリル酸の性質と取り扱い上の注意
- 水・アルコール・エーテルなどと任意割合で混和する(水溶性)。
- 非常に重合しやすいため、重合防止剤(例:MEHQ等)を添加して貯蔵する。 阻害剤は酸素存在下で効果が発現する点に留意。
- 重合を促進する条件:加熱・光、酸化性物質・過酸化物・塩基、 金属塩/鉄さび等との接触・混触。局所加熱や停滞部の発熱に注意。
- 融点が約13~14℃で凝固しやすい。 融解時の過加熱は重合暴走・引火の危険 → 凝固させない保管と、融解時の緩やかな昇温・撹拌を徹底。
- 強い刺激性/腐食性。 皮膚・眼の化学熱傷、蒸気/ミスト吸入で粘膜刺激・咳嗽。 適切なPPE(耐薬品手袋・保護眼鏡/フェイスシールド・防護衣)・換気を確保。
- 第2石油類(水溶性)で可燃。引火点≈50℃、 蒸気は空気より重いため低所滞留 → ピット・側溝周りの換気/着火源管理が重要。
- 静電気対策:移送・小分け時はアース/ボンディングを実施。 配管・ホースの導電連続性を確保し、急速充填を避ける。
- 不適合物:強酸化剤・過酸化物・強塩基・アミン類・金属塩/さび。混合禁止・区分保管。
- 容器・設備材質:ステンレス鋼(SUS304/316)、ガラス/ガラスライニング、 HDPE等の耐薬品プラスチック。銅・銅合金などは避ける。
- 消火:耐アルコール泡(AR系)・粉末・CO₂が有効。 霧状水は冷却・希釈用(直噴は拡散の危険)。容器は周囲から冷却。
出る出るポイント!アクリル酸の要点
- アクリル酸は水やアルコールに溶ける水溶性の第2石油類です。
- 融点は約13〜14℃で凝固しやすく、重合しやすい性質があります(重合防止剤を添加して貯蔵)。
- 引火点は約50℃、蒸気比重は約2.5で空気より重く、低所に滞留しやすい点に注意します。
- 蒸気やミストは強い刺激性・腐食性を示し、皮膚・眼・呼吸器への障害に注意します。
- 消火には耐アルコール泡・粉末・CO₂が有効で、霧状水は容器冷却用として使用します(直噴は拡散のおそれ)。
クイズ
次は第3章10節:第3石油類の性状に進みます。