重油

褐色または暗褐色の粘性のある液体で、特有の臭気を有します。

種々の炭化水素の混合物です。

重油の物理的性質
性質 代表値
比重 約0.9〜1.0(水よりやや軽い)※比重が1より小さいのは、第3石油類の中では重油のみ
沸点 300℃以上
発火点 約250℃〜380℃
引火点 A・B重油:60℃以上/C重油:70℃以上(=いずれも第3石油類)

※ 製品・測定条件で前後します。本表は試験対策上の代表値です。

重油の性質と取り扱い上の注意
重油の性質と注意点
① 重油は、日本産業規格により 1種(A重油)・2種(B重油)・3種(C重油)に分類。1種→2種→3種の順に粘度↑(高くなる)。
水に溶けない(非水溶性)。不純物として含まれる硫黄 Sは燃焼で二酸化硫黄 SO2を生じ、有害。
第3石油類(非水溶性)・危険等級 III指定数量 2,000 L(非水溶性)。
引火点が高い(A/B:60℃以上、C:70℃以上)ため常温では引火しにくいが、加熱・霧化で着火しやすくなる点に注意。
蒸気は空気より重い(低所に滞留しやすい)。ピット・地下室・溝などの低い所に蒸気がたまりやすい。
静電気が発生・蓄積しやすい(不導体)。移送・ろ過・噴霧時は接地(アース)とボンディングを確実に。
加温取扱い:粘度低下のために予熱するが、過加熱は蒸気濃度↑→火災リスク↑。蒸気加熱コイル等は温度管理と漏れ点検を徹底。
消火方法泡消火剤(アルコール耐性不要)・粉末二酸化炭素が有効。放水直射は拡散・流出拡大のおそれ(水霧で冷却・近接防護)。
保管密閉容器・通風良好・火気厳禁。直射日光・高温を避け、こぼれ止め縁(防油堤)や漏洩検知を設ける。
流出時:水より軽く水面に広がるオイルフェンスで拡散抑制し、吸着材で回収(側溝や下水へ流さない)。

※ 数値や基準は代表値・一般則。製品仕様や条件により変動します(受験対策用の整理)。

クレオソート油

黄色〜濃黄褐色〜暗緑色〜黒色粘稠な油状液体で、刺激臭を有する。

クレオソート油の物理的性質
性質 代表値/試験対策メモ
比重(20℃) 約 1.1(水より重い/水面ではなく沈下・層状になりやすい)
沸点 200℃以上(混合物のため幅あり)
引火点 約 75℃(第3石油類の範囲)
発火点 約 330〜400℃(文献により幅。代表値は 335℃ 前後)
溶解性 水にほとんど不溶。エタノール・エーテル・ベンゼン等の有機溶剤に可溶
蒸気比重(空気=1) > 1(蒸気は低所滞留しやすい/換気と立入管理)
蒸気圧(常温) 低い(揮発しにくいが、霧状になると着火しやすい)
電気伝導性 低い(不導体→静電気帯電に注意:移送・ろ過時)
粘度 高粘度(低温で急増:加温取扱い時は過熱に注意)

※ 製品や測定条件で前後します。上記は受験対策上の代表値・要点を整理。

クレオソートの性質と取り扱い上の注意
クレオソートの性質と注意点
① コールタールを蒸留して得られる。木材の防腐剤・防虫剤などに用いる。
② 人体に有毒(皮膚からも吸収)。刺激臭があり、皮膚・眼・呼吸器を刺激する。
③ 水に不溶だが、アルコール・ベンゼンなど有機溶剤に可溶。
フェノール類(クレゾール等)・ナフタレン・アントラセンなどを含む混合物。
⑤ 一般に金属腐食性は小さい(ゴム・樹脂を侵すことがある)。
⑥ 区分:第4類・第3石油類(非水溶性)/危険等級III/指定数量 2,000 L
⑦ 物性:比重≒1.1(水より重い→沈下・底部滞留)。蒸気比重 >1(低所滞留)。
⑧ 引火点は高め(目安 75℃)で常温では引火しにくいが、加熱・霧化で着火しやすくなる
⑨ 取扱:不導体につき静電気帯電に注意(移送・ろ過時はアース/ボンディング)。加温時は過熱・蒸気濃度上昇に注意。
⑩ 消火:泡(普通/耐アルコール不要)・粉末・二酸化炭素が有効。放水直射は拡散・流出拡大のおそれ(水霧で冷却)。
⑪ 保管:密閉・通風良好・火気厳禁。直射日光・高温を避け、こぼれ止め縁(防油堤)など漏えい対策を講じる。
⑫ 流出対応:水より重いため沈降・底部に滞留。吸着材で回収し、側溝・下水へ流入させない(環境毒性に留意)。
⑬ 不適合物:強酸化剤とは混触回避(発熱・危険)。高温・火花・裸火を避ける。
⑭ PPE:耐油手袋・保護眼鏡/フェイスシールド・防護衣を使用。皮膚汚染は速やかに除去・洗浄。

アニリン(C6H5NH2

無色〜淡黄色の液体(空気酸化で褐色化しやすい)。特有の臭気をもつ。

アニリンの物理的性質
性質 代表値
比重(20℃) 約1.01〜1.02(水よりわずかに重い
沸点 約185℃(混合物・純度で±)
引火点 約70℃(閉カップ
発火点 約615℃
燃焼範囲 約1.2〜11 vol%
蒸気比重(空気=1) 約3.2(空気より重い
溶解性 水に少量溶解(数%/20℃)、アルコール・エーテル・ベンゼンに可溶
電気伝導性 低い(不導体→移送時の静電気に注意)
区分メモ 第4類・第3石油類(水溶性)/危険等級III/指定数量 4,000 L
アニリンの性質と取り扱い上の注意
アニリンの性質と注意点
① 水には溶けにくいが、ジエチルエーテル・エタノール・ベンゼンにはよく溶ける(水に“少量”は溶ける)。
② 区分:第4類・第3石油類(水溶性)/危険等級III/指定数量 4,000 L(非水溶性の第3石油類は 2,000 L との対比が狙われる)。
③ 物性メモ:比重 ≈1.01〜1.02(水よりわずかに重い)/蒸気比重 ≈3.2(空気より重い=低所滞留)。
④ 引火点 ≈70℃(閉カップ)。常温では引火しにくいが、加熱・霧化で着火リスク上昇
不導体→静電気帯電に注意(移送・ろ過・噴霧時は接地/ボンディングを確実に)。
⑥ 有害性:毒性あり・皮膚吸収あり。メトヘモグロビン血症(チアノーゼ)などのおそれ。皮膚・眼・呼吸器を刺激。
⑦ 外観の変化:無色〜淡黄色だが、空気中で褐色化しやすい(酸化)。
⑧ 不適合物:強酸化剤との混触回避(発熱・危険)。酸類とは塩を作りやすく取り扱い注意。
⑨ 消火:泡(普通)・粉末・二酸化炭素が有効。放水直射は飛散・流出拡大のおそれ(水霧で冷却)。
⑩ 保管:密閉容器・通風良好・火気厳禁。直射日光・高温を避け、漏えい対策(こぼれ止め縁等)。
⑪ 流出時:水より重い&少量溶解のため水域で拡散しやすい。吸着材で回収し、下水・水路への流入防止。
⑫ PPE:耐薬品手袋・保護眼鏡/フェイスシールド・防護衣。皮膚汚染は速やかに除去・洗浄。

ニトロベンゼン(C6H5NO2

淡黄色の油状液体で、特徴的な芳香族臭をもつ(桃を腐らせたような芳香)。純品は無色に近いが空気・光で黄変。

ニトロベンゼンの物理的性質
性質 代表値/試験対策メモ
比重(20℃) 約 1.2(水より重い
融点 約 5〜6℃(室温でも固化することがある
沸点 約 211℃
引火点 約 88℃(第3石油類・危険等級III
発火点 約 480〜490℃(代表値 482℃)
燃焼範囲 約 1.8〜40 vol%(資料差あり/目安で把握)
蒸気比重(空気=1) 約 4.2(空気より重い=低所滞留
溶解性 水に難溶(微溶)/アルコール・エーテル・ベンゼンに可溶
電気伝導性 低い(不導体→静電気帯電に注意)
区分メモ 第4類・第3石油類(非水溶性)/指定数量 2,000 L
ニトロベンゼンの性質と取り扱い上の注意
ニトロベンゼンの性質と注意点
① ニトロ化合物だが、第5類のような自己反応性(自然分解暴走)は原則なく、常温での爆発性もない。
② 区分:第4類・第3石油類(非水溶性)/危険等級III/指定数量 2,000 L(※水溶性ではない)。
③ 物性:融点 約5〜6℃(低温で固化しやすい)/引火点 約88℃(常温では引火しにくいが、加熱・霧化で危険↑)。
④ 比重(20℃)≈1.2で水より重い蒸気比重 >1で低所に滞留しやすい(ピット・溝・地下室に注意)。
⑤ 溶解性:水に難溶(微溶)。アルコール・エーテル・ベンゼンなどの有機溶媒に可溶。
不導体→静電気帯電に注意。移送・ろ過・噴霧時は接地(アース)/ボンディングを確実に。
⑦ 有害性:毒性あり・皮膚吸収あり。メトヘモグロビン血症(チアノーゼ)等の恐れ。皮膚・眼・粘膜を刺激。
⑧ 不適合物:強酸化剤との混触は発熱・危険。高温・火花・裸火を避ける。
⑨ 保管:密閉容器・通風良好・火気厳禁。直射日光/高温を避け、漏えい対策(防油堤・受け皿)。低温固化に伴う加温時は過熱防止
⑩ 消火:泡(普通)・粉末・二酸化炭素が有効。放水直射は拡散・流出拡大の恐れ(水霧で冷却・遮へい)。
⑪ 流出対応:水より重い→沈下・底部滞留。吸着材で回収、側溝/下水への流入防止。水面拡散より底部汚染に注意。
⑫ PPE:耐薬品手袋、保護眼鏡/フェイスシールド、防護衣。皮膚汚染は速やかに除去・洗浄、吸入時は新鮮空気へ。

エチレングリコール(C2H4(OH)2

甘味と粘性のある無色の液体で、吸湿性がある。

エチレングリコールの物理的性質
性質 代表値
比重(20℃) 約1.11(水より重い
融点 約 −13℃(低温でも凍結しにくい
沸点 約197℃
引火点 約111℃(閉カップ
発火点 約413℃
燃焼範囲 約3.2~15 vol%
蒸気比重(空気=1) 約2.1(空気より重い
溶解性 水と任意割合で混和、アルコール・エーテルに可溶
エチレングリコールの性質と取り扱い上の注意
エチレングリコールの性質と注意点
水・エタノールに混和するが、ベンゼンには不溶(極性の差)。
② 自動車エンジンの不凍液(クーラント)として用いられる(低凝固点・高沸点・防錆剤と併用)。
金属ナトリウム等のアルカリ金属と反応して水素を発生(−OH基をもつ多価アルコール)。
④ 区分:第4類・第3石油類(水溶性)/危険等級III/指定数量 4,000 L(※非水溶性の第3石油類は 2,000 L)。
⑤ 代表物性:比重≈1.11(水より重い)/引火点≈111℃(閉カップ)→常温では引火しにくいが、加熱・霧化で着火性↑
吸湿性・粘性が高い(液温低下で粘度↑)。移送・抜出しは加温し過ぎに注意。
静電気:炭化水素ほどではないが帯電管理は必要(接地・ボンディング、低流速)。
毒性(誤飲注意・甘味あり):摂取で腎障害等のおそれ。皮膚・眼・吸入も刺激。PPE(耐薬品手袋・保護眼鏡)を着用。
不適合物:強酸化剤(発熱・危険)、強酸・強塩基(腐食・反応)。アルカリ金属・金属水化物とは禁忌。
保管:密閉容器・通風良好・火気厳禁。直射日光・高温を避け、水と混和するため漏えい時の拡散に備える。
消火耐アルコール泡(水溶性液体のため)、粉末、二酸化炭素が有効。水霧で冷却・防護(直射放水は拡散のおそれ)。
流出対応:水と混和し広範囲に拡散。堤止め(防液堤・排水閉塞)→吸着材回収。下水・水域への流入防止。

グリセリン(C3H5(OH)3

無色・無臭で甘味のある粘稠な多価アルコール。強い吸湿性をもつ。

グリセリンの物理的性質
性質 代表値
比重(20℃) 約1.26〜1.27(水より重い
融点 約17〜18℃(室温付近で固化することがある
沸点 約290〜291℃(加熱で分解しやすい
引火点 約160〜190℃(閉カップ
発火点 約370℃
蒸気比重(空気=1) 約3.2(空気より重い
溶解性 水・エタノールと任意割合で混和,エーテルに可溶/ベンゼンに難溶
グリセリンの性質と取り扱い上の注意
グリセリンの性質と注意点
① ニトログリセリン(爆薬)の原料となる(発煙硝酸+濃硫酸で硝化:取扱厳禁)。
② 水に任意割合で混和し、強い吸湿性をもつ。化粧品・水彩絵具などに利用。エタノールに混和、ジエチルエーテル・二硫化炭素・ガソリン・ベンゼンには難溶
③ アルコールは −OH の数で分類。グリセリンは −OH を3個有する三価アルコール
④ 区分:第4類・第3石油類(水溶性)/危険等級III/指定数量 4,000 L(非水溶性第3石油類は 2,000 L)。
⑤ 代表物性:比重≈1.26(水より重い)/融点 17〜18℃(室温で固化し得る)/引火点≈160〜190℃(常温で引火しにくい)。
⑥ 加温取扱い:固化解消で加温するが、過熱は禁物。高温・酸性条件でアクロレイン(刺激性・有害)が生成しうる。
⑦ 反応性:アルカリ金属(Na/K)と反応して H2 発生(アルコール一般の性質)。強酸化剤(過マンガン酸塩等)とは混触回避。
⑧ 静電気:炭化水素ほどではないが、移送・ろ過時は接地/ボンディングで帯電管理。
⑨ 消火:耐アルコール泡(水溶性液体)、粉末・二酸化炭素が有効。放水直射は飛散・拡散のおそれ(水霧で冷却・遮へい)。
⑩ 保管:密閉容器・通風良好・火気厳禁。吸湿・混和による漏えい拡散に備え、受け皿やこぼれ止め縁を設ける。
⑪ 流出対応:水と混和→広範囲に拡散。排水系を一時閉塞し堤止め→吸着材で回収。下水・水域への流入防止。
⑫ 健康:低揮発だが多量接触で皮膚・眼刺激。PPE(耐薬品手袋・保護眼鏡)を着用。

クイズ

クレオソート油について、妥当なものはどれか。

次は第3章11節:第4石油類の性状に進みます。

第4石油類の性状