特殊引火物
特殊引火物とは、常圧(1気圧)の条件において、発火点が100℃以下である物質、または引火点が−20℃以下かつ沸点が40℃以下の物質を指します。
特殊引化物の特性
特殊引火物の主な特性 |
① 引火点が低い ➡️ ごくわずかな熱や火源でも着火しやすい。 |
② 沸点が低い ➡️ 常温でも容易に蒸発し、揮発性が高い。 |
③ 燃焼範囲が広い ➡️ 蒸気が空気中で燃焼しやすい。 |
ジエチルエーテル (C₂H₅OC₂H₅)
ジエチルエーテルの物理的性質
性質 |
数値 |
比重(20℃) |
0.7 |
沸点 |
35℃ |
引火点 |
-45℃ |
発火点 |
160℃ |
燃焼範囲 |
1.9 ~ 36 vol% |
蒸気比重(空気=1) |
2.6 |
ジエチルエーテルの性質と取り扱い上の注意
ジエチルエーテルの性質と注意点 |
① 引火点が最も低い。 |
② 無色の液体で、甘い刺激臭がある。 |
③ 水には少しだけ溶け、アルコールにはよく溶ける。 |
④ 空気との接触や日光にさらされると、酸化されて爆発性の過酸化物を生成する。過酸化物は、熱や衝撃を加えると、爆発する危険性が高い。 |
⑤ 電気の不導体で、静電気を発生しやすい。 |
⑥ 蒸気には麻酔性がある。 |
⑦ 二酸化炭素、耐アルコール泡(水溶性液体用泡消火剤)等を用いた窒息消化が有効。 |
⑧ 冷暗所で貯蔵し、容器に収納した場合は密栓する。 |
⑨アクリル樹脂など多くのプラスティック、ゴムを侵すため、それらの材質の容器は使用できない。 金属製、ガラス製、テフロン性などの容器を使用する。 |
二硫化炭素(CS₂)
二硫化炭素の物理的性質
性質 |
数値 |
比重(20℃) |
1.3 |
沸点 |
46℃ |
引火点 |
-30℃ |
発火点 |
90℃ |
燃焼範囲 |
1.3 ~ 50 vol% |
蒸気比重(空気=1) |
2.6 |
二硫化炭素の性質と取り扱い上の注意
二硫化炭素の性質と注意点 |
① 発火点が極めて低い。 |
② 純粋なものは無色だが、光により分解が進み、長時間日光にさらされると黄色を呈する。 |
③ 純粋なものはほとんど無臭だが、通常は特有の不快臭を放つ。 |
④ 蒸気は特に有毒である。かつて、殺虫剤などに利用された。 |
⑤ 貯蔵の際は液面上に水を張ることで蒸気の発生を抑制する。また、屋外タンクでは水槽にタンクごと水没させる。これは比重が水より大きく、水に難容である性質を利用している。 |
⑥ 電気不導体であり、静電気を帯びやすい。 |
⑦ 空気中では青い炎を上げて燃焼し、二酸化炭素と有毒な二酸化硫黄(亜硫酸ガス)を発生する。
CS₂ + 3O₂ → CO₂ + 2SO₂ |
アセトアルデヒド(CH3CHO)
アセトアルデヒドの物理的性質
性質 |
数値 |
比重(20℃) |
0.8 |
沸点 |
21℃ |
引火点 |
-39℃ |
発火点 |
175℃ |
燃焼範囲 |
4.0 ~ 60 vol%(極めて広い) |
蒸気比重(空気=1) |
1.5 |
アセトアルデヒドの性質と取り扱い上の注意
アセトアルデヒドの性質と注意点 |
① 沸点が極めて低く、燃焼範囲が広い。 |
② 無色の液体で、刺激臭をもち、揮発性が高い。 |
③ 水によく溶け、有機溶剤にも溶ける。 ※有機溶剤は有機溶媒ともいい、有機化合物の溶媒である。水溶性ではない多くの溶質を溶かすことができる。エタノール、ジエチルエーテル、ベンゼン、アセトン、クロロホルム、ヘキサンなどがある。 |
④ 還元性をもち、人体ではエタノールの酸化によって生成され、二日酔いの原因とされる。またさらに酸化すると酢酸(カルボン酸に属する)となり、還元(水素化)されるとアルコールになる。
CH3CHO + 1/2O2 → CH3COOH |
⑤ 空気と長時間接触、または加圧下で接触すると、爆発性の過酸化物を生成するおそれがある。また、熱または光で分解し、メタン(CH4)と一酸化炭素(CO)を生じる。
CH3CHO → CH4 + CO |
⑥ 貯蔵の際は窒素などの不活性ガスを封入し、容器は炭素鋼・ステンレス鋼(必要に応じ適合アルミ)を用いる。銅・銅合金・銀は使用しない(接触で危険物質生成のおそれ)。 |
⑦ 一般の泡消火剤は不適当。耐アルコール泡(水溶性液体用泡消火剤)、ハロゲン化合物等の消火剤が有効。 |
⑧ 有毒であるため、直接触れない。皮膚に付着した場合は、速やかに多量の水と石けんで洗い流すこと。 |
酸化プロピレン (C3H6O)
酸化プロピレンの物理的性質
性質 |
数値 |
比重(20℃) |
0.8 |
沸点 |
35℃ |
引火点 |
-37℃ |
発火点 |
449℃ |
燃焼範囲 |
2.1 ~ 39 vol% |
蒸気比重(空気=1) |
2.0 |
酸化プロピレンの性質と取り扱い上の注意
酸化プロピレンの性質と注意点 |
① 無色の液体で特有のエーテル臭をもつ。 |
② 水によく溶け、エタノール、ジエチルエーテルにも溶ける。 |
③ 容器等に貯蔵する場合は、窒素等の不活性ガスを封入し、安定化を図る。 |
④ 一般の泡消火剤は不適当。耐アルコール泡(水溶性液体用泡消火剤)、ハロゲン化合物等の消火剤が有効。 |
⑤ 重合性をもち、反応時に発熱するため火災・爆発の危険がある。特にアルカリ存在下では重合が促進される。 |
イソプレン(C5H8)
イソプレンの物理的性質
性質 |
数値 |
比重(20℃) |
0.68 |
沸点 |
34℃ |
引火点 |
-48℃または-54℃ |
発火点 |
220℃ |
融点 |
約-147℃ |
蒸気比重(空気=1) |
2.35 |
イソプレンの性質と取り扱い上の注意
イソプレンの性質と注意点 |
① 無色の液体で揮発性が高く、やや刺激臭をもつ。 |
② 水には溶けにくいが、アルコールやエーテルにはよく溶ける。 |
③ 可燃性・引火性に富み、特に霧状で空気中に分散すると爆発の危険がある。 |
④ 燃焼時には刺激性または有毒ガスを発生する。 |
⑤ 酸化剤・無機酸・ハロゲンなどと激しく反応し、爆発の危険がある。 |
クイズ
ジエチルエーテルの性質について、妥当なものはどれか。
次は第3章7節:第1石油類の性状に進みます。